2019年06月15日号
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アヴァンギャルド映画(前衛映画)

Avant-Garde Cinema

アヴァンギャルド映画(前衛映画)とは、広義には前衛的要素を持つ映画全般を指すが、狭義には1920年代のヨーロッパ圏を中心として発生し、同時代のアヴァンギャルド芸術運動と結びついた前衛的な映画を指す。「アヴァンギャルド(前衛)」という概念は軍隊用語に由来し、「後衛」に先んじて少数の「前衛」が歴史を切断し、新しい領域を切り開くという含意がある。この概念は当時のヨーロッパ圏における芸術運動に結びつけられたが、映画においてもまたそれらの運動と関係しながら、独自の前衛性の追求が試みられた。時期的には、アヴァンギャルド芸術の隆盛と時を同じくする20-30年代に数多くの代表的作品が生み出された。
ドイツでは物語性を破棄して、形態と運動による抽象性の追求へ向かう傾向が現われ、それは絶対映画(Absolute film)と呼ばれた。抽象図形が変形するハンス・リヒターの『リズム21』(1923)や、ヴァイキング・エッゲリングの『対角線交響曲』(1924)などが代表作であるほか、都市の風景を撮影して再構築したワルター・ルットマンの『伯林 大都会交響曲』(1927)などが知られる。フランスでは現実のイメージをもとに抽象性を追求する傾向が現われ、それは純粋映画(Cinéma pur)と呼ばれた。アンリ・ショメットの『反射と速度の戯れ』(1923-25)、フェルナン・レジェの『バレエ・メカニック』(1924)、ルネ・クレールの『幕間』(1924)などが代表作である。また、同じ頃に現われた、ダダ/シュルレアリスムを背景とする映画としては、マン・レイの『理性への回帰』(1923)、ルイス・ブニュエル+サルバドール・ダリによる『アンダルシアの犬』(1928)が代表作である。ロシアにおいてはこの時期、レフ・クレショフやセルゲイ・エイゼンシュタインによってモンタージュ理論が展開される一方で、ジガ・ヴェルトフがキノ・グラース(映画眼)の方法により、前衛的な記録映画である『カメラを持った男』(1929)などを制作している。アヴァンギャルド映画というと、芸術の純粋性のみを志向しているかのように理解されがちだが、この概念はルットマン、ヴェルトフやヨリス・イヴェンスのような、ドキュメンタリーにおける前衛性までも包括するものであった。

著者: 阪本裕文

参考文献

  • 『前衛映画理論と前衛芸術』, 飯島正, 白水社, 1970

参考資料

  • 『Avant Garde - Experimental Cinema of the 1920s & 1930s』, V.A., Kino Video, DVD, 2005

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