2019年12月01日号
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アートレス

Artless

川俣正が2001年に上梓した『アートレス マイノリティとしての現代美術』のなかで、これまでの自身の作品および芸術観を整理し「提言」というかたちで示した概念。それは、「無自覚な文化教養主義の飾りとしてしか存在しないアートフルな世界」に対置するかたちで、あるいは構築された既存の「『美』なるもの全般に対する懐疑」を出発点とし、「限りなく普通なことの中に潜むもの」を捉え「普通でありながら普通ではなく社会に潜行していくこと」の、すなわちアートレスなアクティヴィズムの提言である。そして、彼の作品もその具体的な表現形態であり、ブラジルのスラムに建つバラックを模した仮設構築物をさまざまな都市空間に配置する「ファヴェーラ」、リハビリ中の薬物・アルコール依存患者や旧炭坑地域の人々と協働で遊歩道や鉄塔などを制作する「ワーク・イン・プログレス」などの代表的プロジェクトのほか、自治体の再開発事業に関連した制作も行なっている。しかし、そうした社会性の強い作品ばかりにアートレスの範囲を限定しているわけでもない。08年の著作『オン・ザ・ウェイ 川俣正のアートレスな旅』では、アートレス・アーティストなるものを「アーティストが華やかにもてはやされる商業主義的なアートの世界とはまったく無関係に、独自のスタイルで自分なりの活動を行っているアーティスト」と定義している。具体的にはR・ウィルソン、T・スミスなど川俣と同様にサイト・スペシフィックな作品を手がけるアーティストに加え、放蕩な生活を送りながらも独自の絵画世界を追求したF・ベーコン、アルコール中毒を克服してグレー一色の抽象絵画を描き続けるA・チャールトンの名前も挙げている。そこでの言及は作家の制作態度にまで及んでいるが、「表現の領域が多様化している現在のアートと社会とのかかわりは、一つの道筋として考えづらくなっている」なかで、美術市場を第一とせずに深く追求されたあらゆる表現形態を社会へ潜行しうる広義のアートレスと見なしているといえるだろう。

著者: 長チノリ

参考文献

  • 『アートレス マイノリティとしての現代美術』, , 川俣正, フィルムアート社, 2001
  • 『オン・ザ・ウェイ 川俣正のアートレスな旅』, , 川俣正, 角川学芸出版, 2008

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