2019年08月01日号
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イタリアン・ポップ

Italian Pop

1960年代のローマを中心に展開したイタリアにおけるポップ・アート的傾向。アメリカのポップ・アート、フランスのヌーヴォー・レアリスムの流れを受けた芸術家たちが、消費文化とマスメディアのイコノグラフィーを作中に導入し、イメージとオブジェの新たな関係を探究した。マスメディアを参照するのみならず、ルネサンス美術から20世紀の形而上絵画や未来派まで、過去と現代の芸術を自在に横断して引用する点に文化的遺産が溢れたイタリアならではの性格があらわれている。例えば、ヌーヴォー・レアリスムのグループに参加した経験のあるM・ロテッラは路上のポスターを引き剥がしてキャンバスに貼り付ける「デコラージュ」シリーズでポップの傾向に先駆け、M・スキファーノはモノクロームの画面にテレビのブラウン管風の縁取りやウォーホルを彷彿とさせる「コカ・コーラ」のロゴを描き込んで絵画をシニカルな「スクリーン」へと変換した。「イタリアン・ポップ」という名称のもとに明確な輪郭をもつグループが結成されたわけではないが、ローマのポポロ広場に位置する二つの画廊、ラ・タルタルーガ画廊とラ・サリータ画廊がイタリアにおけるポップ・アートを含め、当時の最先端の動向を発信した。60年にラ・サリータ画廊で開催されたP・レスタニー企画による「ローマの5人の画家」展には、ポップ・アート的作品を展開したM・スキファーノ、T・フェスタ、F・アンジェリらが参加している。この3人に加え、のちにアルテ・ポーヴェラへと合流するJ・クネリス、M・ピストレットらは、彼らが集った場所にちなんで「ポポロ広場派」と呼ばれ、イタリアのポップ・アートに相当する潮流を短期間のみ形成した(ピストレットの「鏡絵画」は一時期、ポップの系譜に位置づけられていた)。ポポロ広場派は64年にグループ展を開催したが、この年はヴェネツィア・ビエンナーレでラウシェンバーグが大賞を受賞し、ポップアートの熱が最高潮に達した年でもあった。

著者: 中島水緒

参考文献

  • 『イタリアの叛乱 アートが生活をのみこんだ。 イタリアンポップとその時代』, , 高見堅志郎、神崎洋一監修, フジタヴァンテ, 1992
  • 『アヴァンギャルド芸術論 アヴァンギャルドおよびネオ・アヴァンギャルド芸術入門』, , ジョルジョ・デ・マルキス(若桑みどり訳), 現代企画室, 1992
  • 『イタリアの近代美術 1880-1980』, , 井関正昭, 小沢書店, 1989
  • 『ルチオ・フォンタナとイタリア20世紀美術 伝統と革新性をめぐって』, , 谷藤史彦, 中央公論美術出版, 2016
  • 『アルテ・ポーヴェラ 戦後イタリアにおける芸術・生・政治』, , 池野絢子, 慶應義塾大学出版会, 2016

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