2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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オリエンタリズム

Orientalism

直訳すれば「東洋主義」。かつては、ヨーロッパを中心とする西洋世界にとっての「外部」と見なされていた「東洋(オリエント)」の文明を愛好する態度、および東洋学を指し示すために用いられていた。

しかし今日においてこの「オリエンタリズム」という言葉が用いられる場合、エドワード・サイードが『オリエンタリズム』(1978)において示した批判が必ずと言っていいほど念頭に置かれている。サイードは、かつての西洋(オクシデント)がみずからの内部に回収しえない不気味な他者として東洋(オリエント)を表象してきたという事実を指摘し、みずからの文化を中心とする単一的な世界の認識の仕方を批判した。こうしたサイードのオリエンタリズム批判は必ずしも西洋のみに向けられたものではないが、結果として美術(史)を含む従来の西洋中心主義的な物の見方に対して深く反省を迫るものとなった。

80年代以降、サイードのオリエンタリズム批判から何らかの形で影響を受けた書物や展覧会は枚挙にいとまがない。それまでの西洋中心主義的な美術史の相対化を試みた展覧会としては「20世紀美術におけるプリミティヴィズム」(MOMA、1984-85)、「大地の魔術師たち」(ポンピドゥ・センター、1989)などがあり、これらは現在においても美術におけるオリエンタリズム批判について考えるうえでの共通の地平をなしているように思われる(もちろんそこには両展覧会への批判も含まれる)。しかし他方で、近年ではむしろ新たなオリエンタリズムへの回帰現象がしばしば目立つ傾向にある。これは、グローバル化する美術教育やアート・マーケットのなかで、しばしば非西洋圏の作家が独自性を打ち出すための手段として、みずからオリエンタリズム的なものに回帰してしまうという事例である。後者の事例に鑑みるに、かつてサイードが批判したオリエンタリズムは、今日むしろオリエントの側で内面化されるというより複雑な形をとって回帰していると言えるかもしれない。

著者: 星野太

参考文献

  • 『オリエンタリズム(上・下)』, エドワード・サイード(今沢紀子訳), 平凡社ライブラリー, 1993

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