2019年06月01日号
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キャンディッド・フォト

Candid Photo

被写体に気づかれることなく、その自然な表情を撮影した写真のこと。「キャンディッド」とは「率直で遠慮がない」という意味。1920年代から30年代にかけてドイツで活躍したジャーナリスト、エーリッヒ・ザロモンの登場によって、新しい写真術として注目を集めた。ザロモンは24年に発売された小型カメラのエルマノックスを使い、法廷での裁判の場面や、ドイツで開催されていた国際会議で参加者たちが見せる自然な姿を、スナップショットの手法で撮影。その写真の斬新さに驚嘆したイギリスの『ザ・グラフィック』誌がザロモンを「キャンディッド・フォトの名手」と呼び、また、当時のフランス外相アリスティード・ブリアンは、「国際会議に必要なものは、数人の外務大臣とテーブル、そしてザロモンである」と評した。グラフ雑誌の隆盛と小型カメラの登場を背景に、フォト・ジャーナリズムの形成期を象徴する技法となったキャンディッド・フォトであったが、やがてナチスが第一政党として台頭し、33年にヒトラーが首相に就任すると、ユダヤ人であったザロモンはその活動を制限されてしまう。彼は43年にオランダへ逃れるが、44年にアウシュビッツのガス室で犠牲となり逝去した。71年にフォト・ジャーナリストを対象とする「エーリッヒ・ザロモン賞」がドイツ写真協会によって創設されている。

著者: 冨山由紀子

参考文献

  • Beruhmte Zeitgenossen in unbewachten Augenblicken, Erich Salomon, J. Engelhorns Nachf, 1931
  • 『写真におけるリアリズム 近代写真への道しるべ』, 田中雅夫, 日本カメラ社, 1956
  • 『写真家の時代2 記録される都市と時代』, 大島洋編, 洋泉社, 1994

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