2019年12月01日号
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クリティカル・アート

Critical Art

フランス人のフリー・キュレーター、カトリーヌ・ダヴィッドが、初の女性ディレクターとして就任した第10回ドクメンタ(1997)で提唱した概念。ドクメンタは新たな美術の見本市ではなく、芸術は政治(politics)であり詩学(poetics)であるとするダヴィッドは、戦後の現代美術を展観しようとする「レトロ・パースペクティヴ」と、それを社会・政治・経済・思想的な視野から捉えようとする「グローバリゼーション」という二つのテーマを打ち出した。そしてその実現のために、美術館という制度を批判したマルセル・ブロータース、作品と鑑賞者の新たな関係を探ったエリオ・オイティシカ、写真を絵画作品に導入することによって美術の意味を問うゲルハルト・リヒターらが出品作家として選ばれた。彼らの方法論に代表される90年代の美術の批評的なあり様を指す概念がクリティカル・アートである。美術批評家の暮沢剛巳は「本来クリティカル(批評的・危機的)であるはずのアートに、敢えてクリティカルと冠してその根拠を二重に保証してしまう矛盾を孕んでいる」と指摘するが、それまでの総花的な内容が一新された第10回ドクメンタのカタログが、その大半を思想家の言説で占められていた点も、美術の根拠を美術以外のところに求めようとする危機的状況の顕われと見ることができるだろう。

著者: 田中由紀子

参考文献

  • 『現代美術を知るクリティカル・ワーズ』, 暮沢剛巳編, フィルムアート社, 2002
  • 『言語文化研究』13巻4号, 「ドクメンタdocumentaの美学と政治学」, 仲間裕子, 立命館大学国際言語文化研究所, 2002

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