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サンフランシスコ・テープ・ミュージック・センター
The San Francisco Tape Music Center
R・センデルとM・サボトニックによって1962年にサンフランシスコで設立された現代音楽のための施設。中心メンバーはこの二人に加え、M・キャラハン、B・マギニス、A・マーティン、P・オリヴェロス。61年にサンフランシスコ音楽学校で始まったイヴェント・シリーズ「ソニックス」が活動の前身となった。ニューヨークと比べるとまだシーンが小さく、また当時カウンターカルチャーの大きな動きのなかにあったサンフランシスコは音楽、ダンス、映画、文学など各分野の交流が盛んだった。同様に、現代音楽のなかでも異なるスタイルの作家が共に活動していた。同センターに関わった音楽家もセンターの機材を利用して、実験音楽、即興演奏、電子音楽などスタイルにとらわれない制作に取り組んだ。そのなかにはミニマル・ミュージックの創始者として知られるT・ライリーとS・ライヒ、シンセサイザー開発者D・ブックラ、FM音源を考案したJ・チョウニング、さらにL・ハリソン、D・リーディー、S・デンプスター、J・テニー、J・ギブソン、F・ラーベらがいた。ライヒ《It’s Gonna Rain》(1965)やサボトニック《Mandolin》(1963)、オリヴェロス《Bye Bye Butterfly》(1965)などはセンターの機材で制作され、ライリー《In C》(1964)の初演もセンターのシーズン・コンサートだった。後にセンターは66年にミルズ・カレッジに移転して「ミルズ・テープ・ミュージック・センター」と改称され、さらに69年に「現代音楽センター」に変更されたが、このときにはすでにそれまでの中心メンバーは関わっていなかった。ヨーロッパ、アメリカ東海岸、アカデミズム、ケージ周辺を重視する傾向のある現代音楽史のなかで、同センターの活動は比較的光が当てられてこなかった。2008年になってインタヴューや論考をまとめたD・W・バーンスタインによる『サンフランシスコ・テープ・ミュージック・センター 1960年代のカウンターカルチャーとアヴァンギャルド』が出版され、ようやくその詳細が広く知られるようになった。
著者: 金子智太郎
参考文献
- The San Francisco Tape Music Center: 1960s Counterculture and The Avant-Garde, David W. Bernstein, University of California Press, 2008
関連ワード
関連人物
アンソニー・マーティン(Anthony Martin)
ジェームズ・テニー(James Tenney)
ジョン・ギブソン(John Gibson)
ジョン・チョウニング(John Chowning)
スチュアート・デンプスター(Stuart Dempster)
スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)
ダグラス・リーディー(Douglas Leedy)
テリー・ライリー(Terry Riley)
デヴィッド・W・バーンスタイン(David W. Bernstein)
ドン・ブックラ(Don Buchla)
ビル・マギニス(Bill Maginnis)
フォルケ・ラーベ(Folke Rabe)
ポーリン・オリヴェロス(Pauline Oliveros)
マイケル・キャラハン(Michael Callahan)
モートン・サボトニック(Morton Subotnick)
ラモン・センデル(Ramon J. Sender)
ルー・ハリソン(Lou Silver Harrison)