2019年08月01日号
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システムズ・ビルディング

Systems Building

システムズ・ビルディングとは、建物の部分を、それを生産する仕組みまでを含めてシステムとして捉え、それら部位ごとに分割されたシステム=サブシステムが統合された結果としての建築全体を、トータル・システムとして設計しようとする考え方である。ここで、個々のサブシステムはそれぞれが独立して設計・生産されることが想定されているため、トータル・システムの「設計」は、従来的な建築設計とは大きく様相を異にする。つまり、トータル・システムの設計者は、個々の部位の寸法や材料といった仕様を決定するのではなく、部位に要求される性能や設計基準のみを設計するのである。システムズ・ビルディングという考え方は、1960年代後半にエズラ・エーレンクランツによって提唱された概念であり、その基本的なアイディアは、NASA によるアポロ計画にも適用されたとされる「システムズ・アプローチ」を建築生産へ展開しようとすることにあった。システムズ・アプローチとは、月面への有人宇宙飛行計画のような複雑なシステムを設計するにあたって、全体のシステムをサブシステムに分割し、それらサブシステムそれぞれを異なる主体が設計することによって、そのプロセスを効率化・合理化しようとするものであるが、エーレンクランツによるシステムズ・ビルディングの目的は、複雑な建物を設計することではなく、むしろ建物の部位の自律的生産を実現することにこそあった。目標とするトータル・システムから、部位に要求される性能が定まれば、その生産にさまざまな企業が参入可能となり、それら企業の競争の結果として、低コスト化が実現できると期待されたのである。事実、60年代前半に、エーレンクランツはカリフォルニアの小学校建設プログラム「SCSD(School Construction System Development)」にこの考え方を適用し、成功を収めている。システムズ・ビルディングに関する研究は国際的な広がりも見せ、日本においては内田祥哉らによって研究開発が行なわれ、《実験集合住宅NEXT21》(1993)などの作品が実現し、またSI(スケルトン・インフィル)住宅の理論的源流のひとつともなった。一方、システムズ・ビルディングの考え方は、セドリック・プライス、ノーマン・フォスター、リチャード・ロジャース、レンゾ・ピアノなど、後に「ハイテック・スタイル」を形成した建築家にも影響を与えたと言われており、例えばフォスターによる断面パースの表現とSCSDにおけるそれとの類似性などは、しばしば指摘される。

著者: 門脇耕三

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