2019年06月15日号
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シンメトリー

Symmetry

上下・左右の対称(相称)。平面を中央から分割した際の両側の形態や形の正確な対応、あるいは構造物の中心や軸をとりまく要素の対応のこと。ピラミッドなどに顕著に示されるように、古来より多くの人工物に見られる構成や造形のひとつであり、デザイン、装飾、建築、絵画、彫刻などの表現形式を横断して普遍的に見出される美学的要素である。特に、ルネサンス期のヒューマニズム建築の潮流においては、ファサードの平面化、比例関係の重視にともなって全体の均整、左右のシンメトリーが強調されることになった。芸術心理学者R・アルンハイムは、『中心の力 美術における構図の研究』(1982)において、古今のさまざまな対象を検討し、シンメトリーは、観る者が知覚する重力の感覚と関係すると指摘する。例えば対称性を備えた絵画は、重力的な均衡をもたらし、中心軸や中心点によって、画面の左右上下に配置された諸要素が相互に結びつけられ、全体的な調和・均衡がもたらされる(例えばJ・アルバース)。逆に、非対称的な絵画は、そのような相互性を欠如させるために、各要素が相互連関を失い、孤立した運動を開始する(例えばP・モンドリアン)。ゆえに対称性が絶えず全体性や中心性に折り返される一方、非対称性は各要素の多方向的な散乱状態、すなわち一種の無政府主義的様態を呈することになる。もちろん、そこに単なる知覚的な域を超えた絵画原理に内在する政治的な力学場を読み取ることも不可能ではないだろう。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『中心の力 美術における構図の研究』, ルドルフ・アルンハイム(関計夫訳), 紀伊国屋書店, 1983

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