2019年06月01日号
次回6月17日更新予定

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ステイニング

Staining

「滲み込み」の意。汚れ、滲みを意味する「tache」に由来するフランス語のタシスムと語義が近いが、タシスムが広く理念、動向を含むのに対して、こちらは下塗りを施していないキャンヴァス(ロウ・キャンヴァス)に薄く溶いた絵具で直接描く具体的な技法を指す。1952年、H・フランケンサーラーが開発し、彼女の作品《山と海》はステイニングによる最初の作例とされる。この手法によって、フランケンサーラーは男性支配のニューヨーク・スクールにおいて重要な作家の一人となった。同輩のアーティストのM・ルイスとK・ノーランドは両者ともに彼女のスタジオを訪れた後にステイニングを自作に取り入れている。この技法に着目したC・グリーンバーグは、かれら1950年代に登場した一群の画家を抽象表現主義以降の世代とみなし、「ポスト・ペインタリー・アブストラクション」と呼んだ。抽象表現主義が絵画制作における身体の動きとプロセスを強調する中で、フランケンサーラーはJ・ポロックのドリッピングをより抒情的な方向へ展開させたといえる。重力のみならず油が滲み込み乾燥する過程が仕上がりに大きく関わり、コントロールできない素材の力に影響されやすい。支持体と絵具が層をなさず一体化してストロークやタッチを生まない点、そして、キャンヴァスに滲み込んだうつろな色面の広がりが地と図の区別を曖昧化し、イリュージョンを排した純粋な色彩を前面化する点について、グリーンバーグは触覚性・重量感の拒否と、視覚性の強調を指摘している。さらに、上記した作家においてはいずれも、色彩のみならず塗られずに残されたむき出しのキャンヴァスが効果を上げていることも注目される。

著者: 成相肇

参考文献

  • Art International, , Clement Greenberg, Louis and Noland, 1960

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