2019年09月15日号
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スピーカー

Speaker

音声を機械的に増幅する機械、もしくは、音声の電気信号を物理信号に変えて音声を生み出す機械。スピーカーをはじめとする音声複製技術は、音を知覚する新しいモードを要請した。スピーカーの再生音を録音された元の音声(原音)“として”知覚するために、私たちは、再生メディアの存在をカッコに入れる聴取モードを身につける必要があった。しかし、スピーカーが完全に透明化することはなかった。まずその特徴的な視覚的形態──多くは長方体──が注目されるだろう。はやくは電気式スピーカー登場以前に、たとえばルッソロの騒音楽器「イントナルモーリ」がその形態を模倣していた。また大きく時代は下るが、あくまでも音楽の「再生音」を生成するに過ぎないスピーカーという脇役に、スポットライトをあてる作品も登場した。S・ライヒ《振り子の音楽》(1968)やG・モナハン《スピーカー・スウィンギング》(1982)などである。後者は3台のスピーカーを振り回すことでドップラー効果とライティングの妙を演出するサウンド・アートの古典である。またたとえばC・マークレイの《ステレオ・ヴォリューム》(1989)では、スピーカーが彫刻の台座に、その再生音が彫刻作品に見立てられる。彫刻作品と同じくvolume(量感、音量)を持つ「再生音」が、原音の問題圏とは無関係に、アートの素材として用いられるわけだ。スピーカーは透明なメディアどころではなく、積極的にその存在感を誇示しているのだといえよう。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『音響技術史 音の記録の歴史』, 森芳久、君塚雅憲、亀川徹, 東京藝術大学出版会, 2011
  • 『「声」の資本主義 電話・ラジオ・蓄音機の社会史』, 吉見俊哉, 講談社, 1995
  • 『ユリイカ』1985年12月号, 「雑音の芸術・未来派宣言」, ルイジ・ルッソロ(細川周平訳), 青土社
  • Christian Marclay, Jennifer González, Kim Gordon and Matthew Higgs, Phaidon, 2005
  • Sound by Artists, Dan Lander and Micah Lexier eds., Art Metropole and Walter Phillips Gallery, 1990

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