2019年08月01日号
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スラム・クリアランス

Slum Clearance

スラム化した居住地区を行政や公共団体が主体となって再開発し、低家賃の公共住宅をスラム住民に提供する一連の事業を指す。主にスクラップ・アンド・ビルドの手法が用いられ地区の土地を買収し、不良住宅を撤去、そこに公共賃貸住宅を建設する。こうした再開発としては、ジョルジュ・オスマンが19世紀に遂行したパリの大改造、ル・コルビュジエが提唱した「輝く都市」(1930)なども挙げられる。しかし、スラム・クリアランスの名のもとで行なわれる近代的な都市美化はしばしば批判されている。なかでもアメリカのジャーナリストであるジェイン・ジェイコブスは著書『アメリカ大都市の死と生』(1961)において、現在施行されている近代都市のスラム・クリアランスを否定し、高密度でありかつ多様性をもつ都市が必要だと主張した。ミノル・ヤマサキ設計によるアメリカ・ミズーリ州に建つ集合住宅団地《ブルーイット・アイゴー》(1954)は、スラム・クリアランスを経てつくられた近代的な団地が再びスラム化し、環境の悪化と住人の激減などを理由に72年に爆破解体された。この出来事はチャールズ・ジェンクスによって「近代的な方法論の終焉」と位置づけられている(『ポスト・モダニズムの建築言語』[1977])。世界人口の半数以上が都市に集住する現在、高人口密度、不動産の不法占拠、衛生管理など、数々の問題を解決すべく、今なおオリンピックや国際会議などの開催を契機にスラム・クリアランスは頻繁に行なわれているが、近年はこれらと異なる試みも生まれている。例えば、アルゼンチン出身でスラム改善支援活動をしているホルヘ・エンソレーナは自著『世界の貧困問題と居住運動』(2007)で、世界各地の支援グループや貧困者自身による住宅獲得のためのプロジェクトを紹介している。また建築家の原広司は集落調査から見出した方法論をもとに、スラム改善を目的とした実験住宅を南米ウルグアイの首都モンテビデオなどで建設した。チリ出身の建築家アレハンドロ・アラヴェナは、増改築を前提とした貧困層向けの《キンタ・モンロイの集合住宅》(2004)で、チリのファヴェーラと呼ばれる貧困街の改良を実践的に行なうなど成果を示している。

著者: 伊藤幹

参考文献

  • 『アメリカ大都市の死と生』, ジェイン・ジェイコブス(黒川紀章訳), 鹿島出版会, 1977
  • 『スラムの惑星 都市貧困のグローバル化』, マイク・デイヴィス(酒井隆史監修、篠原雅武、丸山里美訳), 明石書店, 2010
  • 『世界の貧困問題と居住運動』, ホルヘ・エンソレーナ, 明石書店, 2007

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