2019年08月01日号
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スーパーグラフィックス

Supergraphics

建物の外壁や内壁(床・天井も含む)、もしくは建築・都市環境に施される巨大なスケールの、多くはカラフルなグラフィック表現のこと。主にペイントされたものを指すが、近年では壁面上にディスプレイあるいはプロジェクトされる一過性の大きな動画についても言われることがある。この語およびこの種の表現がいつから注目を集めるようになったかは、正確には不明だが、1960年代半ばにチャールズ・ムーアが《シー・ランチ》を設計。その内部をバーバラ・スタウファカー・ソロモンが、室内間をダイナミックに縦横する色鮮やかなグラフィックでペイントしたのが、概して最初期の代表例と見なされる。この頃からこうした試みが、色彩と装飾を排除してきた近代建築への批判的射程を持つ(もしくは抵抗となる)空間表現として次第にムーヴメント化し、それを67年に建築評論家のC・レイ・スミスがこの語を用いて論評するなど、次第に語彙としても一般化してゆく。そこでなされた実践は、大きく見ればアーキグラムあるいはヴェンチューリらによる、建築とイメージ平面との関係性をめぐる(プレ・)ポストモダン的な問題提起と、同時代的な共鳴を奏でるものだった。70年代半ば頃には、流行の表現としてはいったん終息を見るが、今日でもとりわけサイネージや環境グラフィックの見地から、豊かな可能性を持つ表現として注目される。また、デジタルな情報環境の到来により旧来の文化ジャンル間の境界が溶融し、グラフィックと建築との差異も不分明化してきた昨今、こうしたグラフィックによる建築空間や環境の変容、もしくは建築や環境のデザインにおけるグラフィカルな平面(プラン)のイメージ操作は、アクチュアルな表現領域として再浮上してきている。それは、デザインと建築の双方の正史から幾分軽視されてきたものの、二次元的建築あるいは三次元的グラフィックとして看過しえぬ表現領域を開示している。

著者: 瀧本雅志

参考文献

  • 『Supergraphics 空間の変容:壁面、建築、空間のためのグラフィックデザイン』, Tony Brook、Adrian Shaughnessy(takimoto訳), ビー・エヌ・エヌ新社, 2011
  • 『建築の解体 1968年の建築情況』, 磯崎新, 鹿島出版会, 1997

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