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ソニフィケーション
Sonification
ソニフィケーションとは、情報の伝達に非言語音を用いる手法を指す。視覚的に情報を表現する手法である「可視化」に対し、聴覚的に情報を表わすことから「可聴化」とも呼ばれる。本質的に時間軸に依存する音を用いることから、特に時系列で変化する情報、定常状態からの変化の伝達に適しているといわれており、この古い例としては初期のコンピュータの動作をAMラジオで拾った真空管の発するノイズから確認するというデバッグ(バグを特定、確認する)手法や、心拍に応じてパルス音を鳴らす心拍計などがある。1980年代の後半からは人と情報機器とのかかわり合いのなかで積極的に音を使う動きがあり、特にユーザ・インタフェースの分野で顕著に見られた。例えば、ウィリアム・W・ガーヴァーが開発した「Auditory Icon」(1986)では、ゴミ箱にファイルを捨てた際にそのサイズに応じての音の高さが変化するというように、コンピュータ内の出来事と日常の出来事が対応づけられている。また、M・ブラットナーらが開発した「Earcons」(1989)では、ファイルと消去コマンドそれぞれに別の音を割り当て、その連なりでファイル消去を表わすなど、階層構造を持つ情報を音で表現するために西洋音楽の手法を取り入れている。その他、コンピュータの動作以外にも、地震や株価の変動、微生物の動きや宇宙線の変化などを音として表わすなどの試みが数多く行なわれている。
著者: 城一裕
参考文献
- International Community for Auditory Display, “Sonification report: Status of the field and research agenda”, G. Kramer, B. Walker, T. Bonebright, P. Cook, J. Flowers, N. Miner, and J. Neuhoff, 1999
- 『アフォーダンスの構想 知覚研究の生態心理学的デザイン』, 「いったい何が聞こえているんだろう?」, W・W・ガーヴァー(黄倉政広、筧一彦訳), 東京大学出版会, 2001
- The Sonification Handbook, Thomas Hermann, Andy Hunt, and John G. Neuhoff, eds., Logos Publishing House, 2011
- 『iPhone×Music 「iPhone が予言するいつか音楽と呼ばれるもの」』, 「情報としての音 その源流」, jou, 翔泳社, 2009