Artwords(アートワード)
ダダ/シュルレアリスム映画
Dada/Surrealism Cinema
1920-30年代のヨーロッパ圏において、ダダ/シュルレアリスムの芸術運動を背景として制作されたアヴァンギャルド映画(前衛映画)を指す。当時のアヴァンギャルド映画の諸動向のなかでも、フランスでは現実のイメージを抽象化した純粋映画(Cinéma pur)の動向が現われていた。そうしたなか、最初のダダ映画とされるマン・レイの『理性への回帰』(1923)がダダの大会である「毛の生えた心臓」において上映された。それはカメラを使用せずにフィルムを感光させるレイヨグラフの技法によって、釘などのイメージを映し込んだフィルムに、夜景や裸体などを撮影したフィルムの断片を繋ぎ合わせた作品であった。また、マルセル・デュシャンはマン・レイ、マルク・アレグレと共同で、円盤が渦巻き状に回転するだけの『アネミック・シネマ』(1925-26)を制作し、ハンス・リヒターは抽象図形による『リズム』シリーズを制作している。その後、アントナン・アルトーの脚本によるジェルメーヌ・デュラックの『貝殻と僧侶』(1927)が制作された。この映画は最初のシュルレアリスム映画とされる(ただし、その映画表現は、映画におけるシュルレアリスムを徹底したものとはいえなかった)。これに続いて制作されたルイス・ブニュエル+サルバドール・ダリによる『アンダルシアの犬』(1928)は、人間内部の抑圧された残酷かつ奇怪なイメージの追求を徹底し、それを脈絡なく繋ぎ合わせることによって、シュルレアリスムの目指すものを映画において実現する。本作はシュルレアリスム映画の代表作となった。
著者: 阪本裕文
参考文献
- 『映画のシュルレアリスム』, アド・キルー(飯島耕一訳), フィルムアート社, 1997
参考資料
- 『アンダルシアの犬/ブニュエルの秘かな愉しみ』, ルイス・ブニュエル, 紀伊国屋書店, DVD, 2010
- 『La Coquille et le Clergyman』, Germaine Dulac, Light Cone/Paris Experimental, DVD, 2009
- 『Cinema Dada 1921-1928』, V.A., Re-Voir, DVD
- 『Avant Garde - Experimental Cinema of the 1920s & 1930s』, V.A., Kino Video, DVD, 2005