2019年08月01日号
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テープ(磁気録音)/カセット・テープ/テープ・レコーダー

Tape(Magnetic Recording) / Compact Cassette/Tape Recorder

音の空気振動を磁気的に記録する音響記録複製テクノロジー。1898年にデンマークのV・ポールセンが初の磁気録音機「テレグラフォン」を発明し、それ以降、ワイヤーを用いた磁気録音が開発された。テープ・レコーダーは、第二次大戦中にナチス・ドイツで使われていた優秀な磁気録音機に触発され、アメリカで開発された。テープ録音を活用する音楽制作は、音響録音編集作業を可能にし、プロアマ問わず、マルチトラック録音に基づくポスト・プロダクションの可能性を開拓した。1950年代に、ミュージック・コンクレート(P・シェフェール)や電子音楽(K・シュトックハウゼン)、あるいはレス・ポールによる多重録音の楽曲などを生み出した。また60年代にはグレン・グールドがテープ編集を活用した西洋芸術音楽の録音を行ない、ビートルズはアルバム制作においてマルチトラック録音の可能性を開拓した。一方でテープ録音は、エジソンによって発明されたフォノグラフ(円筒型蓄音機)以来久々に登場した、一般人が使える音響録音テクノロジーだった。人々は市販の音楽をダビングして「私的利用のための音楽複製」ができるようになったし、カセット・テープ(60年代前半)やウォークマン(1979)の登場は人々の音との付き合い方を大きく変えるテクノロジーだった。また私たちは、プライヴェートな音声(自分たちの音楽演奏や会議や講演の音声)を記録できるようになった。職業的音楽家の制作した音楽を複製録音したり日常風景の中の音を録音したりする私たち一般人は、音響テクノロジーにおけるアマチュア写真家のような存在に喩えることも可能かもしれないが、一般的な名称はないし、細かな部分では様々に違うことは確かだ。とはいえ少なくとも、フォノグラフ以来久々に登場した一般人も使える音響録音機能は、音響記録複製テクノロジーと写真などのイメージ複製テクノロジーとのあいだの、社会的重要性や影響力の差異を示す兆候のひとつとして文化史的に重要なことは確かだろう。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『音響技術史 音の記録の歴史』, 森芳久、君塚雅憲、亀川徹, 東京藝術大学出版会, 2011

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