2019年12月01日号
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トマソン

Thomasson

前衛芸術家・作家の赤瀬川原平の言うところの「不動産に付着していて、美しく保存されている無用の長物」のこと。「超芸術トマソン」とも。1972年、赤瀬川は街を歩いていると、上がった先になにもない階段を見つける。彼は街にある用途のない物の存在が芸術ではないかと考え、「超芸術トマソン」と名付けこれらを収集し分類する活動を始めた。ほかの事例としては、入り口が塞がれた門、庇うものがない庇などが挙げられる。「トマソン」という名称は、元読売ジャイアンツ選手の「ゲーリー・トマソン」に由来する。彼は当時高額の助っ人選手として雇われた四番打者であったが、毎度空振り続きであった。その役に立たない様子を皮肉って、彼の名前がこの名称として用いられた。その後「トマソン」は80年頃に芸術に関心のある若者を中心にブームとなり、芸術的用語として広く知られるようになったのは特筆すべきである。トマソンの概念は、芸術と非芸術の境界を模索する当時の前衛芸術の流れを受けたと言え、「超芸術」とは作り手に無意識につくられ、観察者が発見することで初めて芸術になるという点で、創作意図をもってつくられる「芸術」とは区別される新しい概念と言える。その頃、「トマソン」のほかにも、赤瀬川の言う「超芸術」をフィールドワークを通して調査する活動があり、『建築探偵の冒険 東京篇』を記した藤森照信、マンホールの蓋の研究の林丈二、建築破片収集の一木努といった活動家がまとまって『路上観察學入門』が86年に出版され、彼らによって「路上観察学会」と呼ばれる団体が結成された。

著者: 細川大貴(大阪市立大学倉方研究室)

参考文献

  • 『超芸術トマソン』, 赤瀬川原平, 筑摩書房, 1991
  • 『日本・現代・美術』, 椹木野衣, 新潮社, 1998
  • 『路上観察學入門』, 赤瀬川原平ほか編, 筑摩書房, 1986
  • 『路上探検隊 奥の細道をゆく』, 路上観察学会編, 宝島社, 1991

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