2019年06月01日号
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トーナリズム

Tonalism

19世紀末から20世紀初頭にかけて米国に現われた風景画の一様式。色調主義。用語そのものは1890年代の終わりに米国の美術批評家たちが国内絵画の新たな傾向を「トーナル(色調)」と評したのが始まりとされる。19世紀中頃から後半にかけての米国においては、ハドソン・リバー派の画家がナショナリズムの勃興を背景に神の顕現やロマン主義的な自然賛美をテーマ化した写実的かつ理想主義的な風景を描き、また印象主義の画家が太陽光に照らされた人物や環境世界を鮮やかな色合いと荒い筆遣いで描いたのに対し、トーナリズムの作家はバルビゾン派やハドソン・リバー派、また浮世絵に影響を受けながらも、霧、影、柔和な光で覆われた自然景を茶、灰、青などのくすんだ色彩を用いながら、静謐な自然景の中に主観的な内省世界を投影した象徴主義的な絵画を制作した。またJ・A・M・ホイッスラーは輪郭線を曖昧化し、朦朧とした大気に覆われた世界を描くことで抽象絵画の表現に接近することとなった。代表的な作家にはホイッスラーのほかにG・イネスがおり、またE・スタイケンらフォト・セセッションの写真家もトーナリズムに影響された絵画的写真を残している。

著者: 松本晴子

参考文献

  • George Inness and the Visionary Landscape, , Adrienne Baxter Bell, George Braziller, 2007
  • A History of American Tonalism,1880-1920, , David Adams Cleveland, Hudson Hills Press, 2010
  • James Abbott McNeill Whistler: A Life, , Gordon H. Fleming, St. Martins Press, 1991

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