2019年08月01日号
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ドキュメンタリー演劇

Documentary Theatre

現実の社会で起こった出来事を劇的形式を用いて舞台でとりあげる演劇を指す。事実の演劇(Theatre of Fact)とも言う。歴史的な記録や文書資料などを活用して、フィクションを物語る演劇や審美的価値を重視する演劇、スペクタクルを見せる演劇とは一線を画す。第一次世界大戦以降の左翼演劇の出現と結びついており、ワイマール共和国でエルウィン・ピスカートルが映画や機械仕掛けの舞台装置を用いて現代の事件を再現した作品は、初期の代表的な事例である。1960年代になると、マッカーシーによる「魔女狩り」の時代を背景に、アメリカの原爆製造の責任者となった科学者を扱ったハイナー・キップハルトの《オッペンハイマー事件》(1964)などが現われ、ドキュメンタリー演劇は注目を集めた。ほかには、ドイツのピーター・ヴァイスやロルフ・ホーホフートが代表的作家である。ヴェトナム戦争を扱ったイギリスのピーター・ブルックによる《US》(1966)も、この形式の作品とみなされている。66年の論考でジャン=ポール・サルトルはハプニングと比較して、ハプニングが現実そのものを提示するのに対して、ドキュメンタリー演劇は、現実を架空のものへと転換するものであると考察している。近年でも、同性愛者マシュー・シェパードがヘイトクライムで殺害された事件を題材に、多数のインタヴューを行なってそれに基づき戯曲を構成したアメリカのモイセス・カウフマンの《ララミー・プロジェクト》(2000)など、社会問題を取材し、その結果を客観的に舞台に持ち込む作品がつくられている。

著者: 木村覚

参考文献

  • 『西洋演劇用語辞典』, テリー・ホジソン(鈴木龍一、真正節子、森美栄、佐藤雅子訳), 研究社出版, 1996
  • Sartre on Theater, “Myth and Reality in Theater”, Jean-Paul Sartre, Quartet Books, 1976

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