2019年06月01日号
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ハーレム・ルネサンス

Harlem Renaissance

ハーレム・ルネサンスとは、1920年代から30年代にニューヨーク州マンハッタン島のハーレム地区で花開いたアフリカ系アメリカ人による文化運動である。南北戦争後、より良い生活を求めて南部から移住してきたアフリカ系アメリカ人や、カリブ地域からの移民たちが同地区でコミュニティを形成していた。第一次世界大戦後の好景気は、黒人社会にも影響を与え、やがてハーレムにジャズ・文学・舞台などを含む多様な芸術文化が展開されるようになった。ハーレム・ルネサンスはアフリカ系の人種的アイデンティティを啓発する思想的・社会的運動であり、W・E・B・デュボイスやマーカス・ガーヴェイなどの精神的指導者は、アフリカ系アメリカ人の歴史を自分たちの手で書きなおした。ハーレムで活躍した美術家や音楽家たちもこうした思想に影響を受け、芸術を自らの人間性と人種的アイデンティティを求める活動と結びつけていた。アーチボルド・モトリーやアーロン・ダグラスなど、20年代に登場した画家たちは、ハーレムの街並みやアフリカのイメージを描き、アフリカ系アメリカ人による自身の表象の先駆けとなった。また、ビリー・ホリデイの歌「奇妙な果実」の歌詞に見られるように、芸術は個人的な表現を超えて社会問題を告発するメディアでもあった。
ハーレム・ルネサンスの意義は、従来のミンストレル・ショーなどに見られた、固定的でカリカチュア化された黒人像を一変し、アフリカ系アメリカ人が自らの言葉で自らの文化を語ったことにある。60年代に始まった公民権運動以後でこそ、アフリカやアジア出身の知識人が自らの文化を語りなおす運動が世界的に見られるようになったが、ハーレム・ルネサンスは不完全ながらもマイノリティによる文化表象に先鞭をつけたという点で評価される。29年の大恐慌によってハーレムは衰退し、街はスラム化が進んだ。しかし、90年代から再開発が始まり、大型店舗が次々に出店して様子が大きく変わりつつある。

著者: 荒木慎也

参考文献

  • 『モダニズムとハーレム・ルネッサンス 黒人文化とアメリカ』, ヒューストン・A・ベイカー・ジュニア(小林憲二訳), 未来社, 2006

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