2019年06月01日号
次回6月17日更新予定

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バッド・ペインティング

Bad Painting

1978年、ニューヨークのニュー・ミュージアムで行なわれた同タイトルの展覧会に集まった絵画傾向を指す。先進国の美術の70年代を牽引していたコンセプチュアル・アート、ミニマル・アートに対して絵画の復権を唱えたネオ・エクスプレッショニズム(新表現主義)の先駆けとなる展覧会として位置づけることができるであろう。ヨーロッパの新表現主義が政治的動向をはらんでいたのに対して、アメリカのバッド・ペインティングはきわめて個人的な自伝的要素を稚拙に表現した。同じ頃、アメリカではロウブロウと呼ばれるストリートアートもシーンに登場したが、バッド・ペインティングが異なるのは絵画というファインアートにこだわった点である。それを、ポップ・アートに対するアンチテーゼとして解釈することもできるだろう。展覧会の企画者であるキュレーターのM・タッカーは、当時アメリカで「古典」とされたフォト・リアリズムやミニマル・アートに対して敬意を払いながらも、故意に侮蔑するような作品を選出した。「良き趣味」とされるアートに対する無礼は、アメリカの伝統的な価値観の崩壊を端的に示しているといえよう。ヴェトナム戦争に疲弊し、暴力とドラッグとセックスが蔓延するアメリカの病を、出品した主に30-40代の作家たちは見逃していなかったのである。

著者: 宮田徹也

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