2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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パンク

Punk

1970年代後半に台頭した音楽文化。DiY(Do ti Yourself)精神に則って自らの表現を伝えていくバンドやムーヴメントを広く指し示し、その影響はファッションやライフスタイルにも及ぶ。セックス・ピストルズが76-78年にかけてイギリスでセンセーションを巻き起こしたことをきっかけに、世界的に波及した。ロンドンでブティックを経営していたデザイナーのマルコム・マクラーレンは、70年代なかばに渡米した際にニューヨークで目撃したラモーンズやニューヨーク・ドールズらに衝撃を受け、自ら同様のバンドをプロデュースすることを決意。帰国後、自身のブティックに通っていた若者を集め、ジョニー・ロットンを中心としたセックス・ピストルズを結成させる。彼らは流血沙汰もいとわぬライヴ・パフォーマンスを通じて鋭い知性に裏打ちされたアイロニカルなメッセージを発信し、当時の社会を批判した。ロットンやシド・ヴィシャスを始めとするメンバーの破天荒な振る舞いや、安全ピンや金属鋲を多用した斬新なファッションもメディアを席巻した。また、簡素なビートに押弦の容易なギターのパワーコードとベースのルート音を乗せ、歌詞を吐き捨てるように歌うシンプルな音楽性は、肥大化したロックの様式に異を立てる役割をはたす。パンクは表現欲求さえあれば誰もが参加しうる新たなカルチャーとして、世界中でフォロワーを生んだ。よりストイックな活動を目指した後続は、メディア露出や大手レコード店での流通も拒絶し、自主制作したジン(小冊子のマガジン)やテープの交換による親密なコミュニケーションによって独力でシーンを築いた。また、アルバムのジャケットやライヴのフライヤーを手がけていく過程で、パンクはアートやデザインの領域とも深く結びつく。ピストルズと同時期にクラッシュを結成したジョー・ストラマーが「パンクはアティテュードだ。スタイルではない」という言葉で表明したとおり、パンクの本質はファッションや音楽性のみにあるのではなく、草の根的なDiY精神をもって批判的表現を追求していく姿勢に宿っている。

著者: 高橋聡太

参考文献

  • 『サウンドの力 若者・余暇・ロックの政治学』, , サイモン・フリス(細川周平、竹田賢一訳), 晶文社, 1991
  • 『スペクタクルの社会』, , ギー・ドゥボール(木下誠訳), 筑摩書房, 2003
  • 『パンク・ロック/ハードコア史』, , 行川和彦, リットーミュージック, 1991
  • 『ポピュラー音楽と資本主義』, , 毛利嘉孝, せりか書房, 2007

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