2019年12月01日号
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ピクトリアリズム

Pictorealism

19世紀半ばのロンドンから始まった、写真の芸術性の確立をめぐる動向のこと。当時、写真は芸術として認められていなかったため、すでに芸術としての地位を確立していた絵画の方法論を模倣することで、その価値を認めさせようとした。宗教・文学・歴史などの寓意的な主題や、絵画的な構図を用いた画面作りが行なわれ、オスカー・ギュスタヴ・レイランダーやヘンリー・ピーチ・ロビンソンによる合成写真や、ロビンソンの著作『写真における絵画的効果』(1869)などが成果として生み出された。これに対して、ピーター・ヘンリー・エマーソンは「自然主義的写真」を提唱。人間の眼の生理的な動きを反映した、「差異的焦点化」(differential focusing)と呼ばれる軟焦点描写の写真を発表した。19世紀末から20世紀初頭には、ロビンソンらの創設した写真団体「リンクト・リング」を中心に、パリやニューヨークへと組織的に運動が展開されていった。ニューヨークでは、アルフレッド・スティーグリッツやエドワード・スタイケン、アルヴィン・ラングドン・コバーンらが「フォト・セセッション」を結成して活動したが、やがて彼らのなかから、ピクトリアリズムを脱して近代写真へと移行する動きが生じていくことになる。日本では「芸術写真」の流れがピクトリアリズムに対応しており、海外の動向を取り入れながら、独自の展開を見せた。ゴム印画やカーボン印画、ブロムオイル印画などの多様な印画法が、これらの流れのなかで広く用いられている。

著者: 冨山由紀子

参考文献

  • Pictorial Effect in Photography, Henry Peach Robinson, Helios, 1971
  • Naturalistic Photography for Students of the Art, P.H. Emerson, Spalding Press, 2008
  • The Death of Naturalistic Photograhy, P. H. Emerson, Arno Press, 1973
  • 「芸術写真の精華 日本のピクトリアリズム珠玉の名品」展カタログ, 東京都写真美術館, 2011

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