2019年06月15日号
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ピンタレスク

Pinteresque

《部屋》(1957)、《管理人》(1959)、《温室》(1980)などで知られ、不条理演劇の代表的劇作家ハロルド・ピンターの戯曲が持つ独特の作風を指す演劇用語。本人の名を変形させたこの語は次第に一般に知られるものとなった。オックスフォード英語辞典にこの語が項目として記載されているのはその証左である。辞典には「ピンターの諸芝居は、日常的なしゃべり言葉や些細な事柄、長い沈黙などからほのめかされる脅威や強い感情によって特徴づけられる」と記されている。ピンターの諸作品では、確かに登場人物のアイデンティティを揺るがす外部からの存在とそれが与える脅威が描かれている。とはいえ、こうした用語が作家本人の意思とは関係なく流布することである問題が生じた。『演劇の解剖』の著者マーティン・エスリンが指摘するように、作家は自分のスタイルに固執するべきという考えの批評家が、後期のある作品について十分ピンタレスクではないと非難したことに対して、ピンター本人が憤慨するという出来事が起きたのである。このことは、個性的な作風がひとつの用語を生み出すまでに流布するという事態とともに、そうした批評用語が作家本人の思いとは別に一人歩きしてしまうという問題をも浮き彫りにした。

著者: 木村覚

参考文献

  • 『演劇の解剖』, マーティン・エスリン(佐久間康夫訳), 北星堂書店, 1991(原著1976)

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