2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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フォール・アンド・リカヴァリー

Fall and Recovery

アメリカのモダン・ダンスの振付家、ダンサーであるドリス・ハンフリーが提唱した、身体の運動や呼吸についての理論。マーサ・グレアムの「コントラクション・アンド・リリース」に似て、緊張と解放の対立という考えを背景にしているが、特徴的なのは身体の自然な動き、特に動作中の重力の重要性を説くところである。『創作ダンスの技法』(1959)でハンフリーは、歩くことを例に「人間という動物において、歩くことはフォール(降下)とリカヴァリー(回復)、つまり重力に屈し、またそれを跳ね返すことの鍵となる基本形である」とした。この重力に抵抗しまた屈服することを繰り返す運動は、さらに人生になぞらえられ、若者と老人の動作がフォールとリカヴァリーの軽快さと弱さの対比として考察されている。また、アポロン的なものとディオニュソス的なものという芸術の二つの側面についてのフリードリヒ・ニーチェの思想もハンフリーの理論に影響を与えている。こうした理論をもとに、ハンフリーはリズミカルで流れる動きのある彼女らしいダンス・スタイルを確立した。

著者: 木村覚

参考文献

  • The Art of Making Dance, Doris Humphrey, Grove Press, 1959
  • 『創作ダンスの技法』, ドリス・ハンフリー(戸倉ハル、後藤ツヤ訳), 世界書院, 1978(原書1959)
  • 『バレエとモダン・ダンス』, 「原則について」, ドリス・ハンフリー, 音楽之友社, 1993(原書1986)
  • International Encyclopedia of Dance: A Project of Dance Perspectives, Selma Jeanne Cohen ed., Oxford University Press, 1998

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