2019年05月15日号
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フラットベッド

Flatbed

狭義には、輪転機印刷とは異なり水平な台の上に版を置き印刷を行なう平台印刷機を指す。美術史家・批評家のレオ・スタインバーグが、論文「他の評価基準(Other Criteria)」(1972)でこの語を取り上げ「平台型絵画平面(the flatbed picture plane)」という概念に発展させた。この論文のなかでスタインバーグは、ルネサンス以来の絵画作品にあるような視覚的光景が投射されるスクリーンとしての平面の存在様態とは異なる機能を、主にR・ラウシェンバーグの1950年代以降の作品に見出している。スタインバーグによれば、抽象表現主義以前の絵画が、観者に向かい合う垂直な面の視覚的水準において自然主義的印象を喚起してしまうのに対して、ラウシェンバーグの操作は、絵画の垂直性を人間の姿勢に対し90度展開する、すなわち〈水平〉にすることであったとされる。雑然とした「作業―面」のイメージで捉えられるこの水平性によって、視覚表象に変換されることなく、画面はデータ、イメージ、事物など、物質と非物質の如何に関わらずさまざまな要素を無差別的に受け止める受容器=フラットベッドを形成する。絵画の垂直性を水平性に読み替えるスタインバーグ批評の操作的な手続きは、その後のラウシェンバーグの作品読解のみならず、後続するR・E・クラウスやY-A・ボワらの議論にも決定的な示唆を与えた。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『美術手帖』1997年1〜3月号, 「他の批評基準」, レオ・スタインバーグ(林卓行訳), 美術出版社,
  • Other Criteria: Confrontations with Twentieth-Century Art, , Leo Steinberg, Oxford University Press, 1972
  • 『アンフォルム 無形なものの事典』, , イヴ=アラン・ボワ、ロザリンド・E・クラウス, 月曜社, 2011
  • 『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』, , ロザリンド・E・クラウス, リブロポート, 1994

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