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プレシジョニズム
Precisionism
主に1920年代から30年代のアメリカで、高層建築、工場、道路などの都市の構造物を、即物的かつ幾何学的な造形性によって描いた画家や、同様の対象を接写して機械主義的な造形美を捉えようとした写真家たちの活動のことを指す。キュビスム的な語法を用いて、単純化に適した人工的な主題を、対象描写との緊密な適合関係において描こうとする姿勢から、それらの絵画が、機械的な描写の精密さ・正確さ・明確さを重視したものであるという見方がなされるようになった。プレシジョニズムは、ほかの前衛主義的活動のように、特定の綱領やグループをもつものではなく、その用語の起源も特定されていない。だが、20年代半ばから、一群の画家たちの様式を指して「精密な(precise)」という形容がなされたことから、次第にこれらの画家を、「プレシジョニズム」と総称するようになったと考えられる。また、機械主義時代のアメリカに特徴的なヴァナキュラーな主題群を描いたということでは、プレシジョニズムは、ヨーロッパ由来の抽象的な絵画性と、しばしば反ヨーロッパ的なモダニズムの流れをもつ、アメリカン・リアリズムの潮流との総合が目指されていたと見なすこともできるだろう。
著者: 沢山遼
参考文献
- Images of America: precisionist painting and modern photography, , Karen Tsujimoto, Published for the San Francisco Museum of Modern Art by University of Washington Press, 1982
- Precisionism in America,1915-1941: reordering reality, , , Abrams,in association with the Montclair Art Museum, 1994
- Charles Sheeler and the cult of the machine, , Karen Lucic, Harvard University Press, 1991