2019年06月15日号
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ペインタリネス/ペインタリー(マーレリッシュ)

Painterliness/Painterly(Marlerisch:独)

「絵画性」「絵画的」を表わす用語。美術史家ハインリヒ・ヴェルフリンは、『美術史の基礎概念』(1915)のなかで、ルネサンス絵画の形式的・様式的特徴を「線的」ないし「彫塑的(plastisch)」と形容し、バロックの「絵画的(marlerisch)」な形式をそれに対立するものとした。のちに批評家クレメント・グリーンバーグがこの「絵画的」という語(英語では「painterly」)を取り上げ、それを同時代の作家に適応した。「marlerisch」の訳語が「painterly」として定着するのは、ハーバート・リードがヴェルフリンの『古典美術』(1898)の英訳版の序文にコメントを寄せてからであるとされている。ヴェルフリンの用語「絵画的」は、輪郭線と強固な量塊性を備えたルネサンスの絵画とは逆の性質を備えた、混じり合う筆触の流動的性質や曖昧な輪郭のことを指す。この語の初期の使用例はヴェルフリンの建築論『ルネサンスとバロック』(1888)に見られ、同書ではバロック建築の装飾性やファサードの装いが「絵画的」であると形容された。グリーンバーグは、作品の視覚性=現象的効果を助長するこの「絵画的」な特質を抽象表現主義の作品に見出し、それらを「ペインタリー・アブストラクション」と総称した。彼はその際、開放性、明瞭性、色彩の強度などを「絵画的」であることの条件として掲げている。その過程においてグリーンバーグは、絵画における彫刻的要素の排除をモダニズム絵画のプログラムに掲げ、「絵画による絵画性の実現」という自同律的な命題による、媒体(medium)の純化を図ったのである。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『美術史の基礎概念 近世美術における様式発展の問題』, ハインリヒ・ヴェルフリン(海津忠雄訳), 慶應義塾大学出版会, 2000
  • 『グリーンバーグ批評選集』, C・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳), 勁草書房, 2005

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