2019年08月01日号
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ポストヒューマニズム

Post-humanism

「ポストヒューマン」とは、文字通り「人間以後(の存在)」のことである。ゆえにもっとも素朴な水準で言えば、「ポストヒューマニズム」という言葉は、機械補綴や人体改造を通じて「人間を超えた存在」を志向する態度として理解される。サイボーグに代表されるこの種のポストヒューマンのイメージは、パフォーマンス・アーティストであるステラークの作品や、1992年から93年にかけてヨーロッパの各都市で開催された「ポストヒューマン」という展覧会に見ることができる。ジェフリー・ダイチの企画によるこの「ポストヒューマン」展に象徴されるように、80年代から90年代にかけて流行したポストヒューマニズムは、コンピュータや遺伝子操作をはじめとする同時代の科学技術の進歩から強い影響を受けていた。他方、近年のポストヒューマン論は、火や石斧といった原始的な道具の使用、あるいは文字や印刷技術の発達を身体機能の外在化と捉えることで、ポストヒューマニズムの再定義を試みている。つまり、機械的に自己を拡張したサイボーグを引き合いに出さずとも、道具を使用しはじめて以来私たちはつねにサイボーグ=ポストヒューマンとして存在してきた、という考え方が近年のポストヒューマン論のひとつの重要な立場を構成している。そのような立場は極端なものであるにせよ、ポストヒューマニズムという概念が性急に人間(ヒューマン)を放棄しようとするものではなく、むしろその批判的検討を含むという事実には留意しておく必要があるだろう。なお、建築の分野における関連書籍としては、ハンネス・マイヤーとルートヴィッヒ・ヒルベルザイマーを論じたM・K・ヘイズの『モダニズムとポストヒューマニズムの主体』(邦題=『ポストヒューマニズムの建築』)がある。

著者: 星野太

参考文献

  • How We Became Posthuman: Virtual Bodies in Cybernetics, Literature, and Informatics, N. Katherine Hayles, University of Chicago Press, 1999
  • Natural-Born Cyborgs: Minds, Technologies, and the Future of Human Intelligence, Andy Clerk, Oxford University Press, 2003
  • 『ポストヒューマニズムの建築 ハンネス・マイヤーとルートヴィヒ・ヒルベルザイマー』, K・マイケル・ヘイズ(松畑強訳), 鹿島出版会, 1997
  • 『表象』02, 特集=ポストヒューマン, 月曜社, 2008

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