2019年12月01日号
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ポストモダニズム

Postmodernism

「ポストモダン」とは「近代(モダン)以後」を意味する。ただし「近代modern」という言葉は、たんなる時代区分を指すものにとどまらず、しばしば19世紀以降の近代的な文化や価値観の総称としても用いられる。よって、「ポストモダン」「ポストモダニズム」もまた、そうした「モダン」「モダニズム」の文化や価値観に対する批判的態度の総称であると見なすことができる。広義の芸術において、このポストモダニズムという言葉が用いられた最初期の例がチャールズ・ジェンクスによる『ポストモダニズムの建築言語』(1977)である。ただし、ジェンクスの著作はモダニズム建築にかわる代替案を提示したものであり、上記のような意味での「近代(モダン)」に対する批判という側面はさほど強くない。冒頭で整理したような意味での「ポストモダニズム」が強く喧伝されるようになったのは、フランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタールの『ポストモダンの条件』(1979)以降のことである。同書の中でリオタールが述べるところによれば、これまでの科学はみずからを正当化するために「大きな物語」としての哲学を必要としてきた。リオタールは、このような「大きな物語」に準拠していた時代を「モダン」、そしてそれに対する不信感が蔓延した時代を「ポストモダン」と呼んでいる。したがってリオタールの定義によれば、ポストモダンとはこうした科学の基礎づけとしての「大きな物語」が失われた時代だということになる。
しかし80年代以降、「ポストモダン」「ポストモダニズム」は一種の標語と化し、新奇なものに対して与えられる肯定ないし否定のためのレッテルと化してしまったという側面がある。今日においてもなお、「ポストモダン」という言葉によって人々が想定しているもの、つまりそこで前提とされている「モダン」の内実が著しく異なっているという状況はしばしば見受けられる。リオタール自身、こうした状況に鑑みて、かつて自身が用いた「ポストモダン」という言葉が大きな誤解を引き起こしたことを自覚し、「ポストモダニズム」とは「モダニズムを書き直す」ことだと言い直している。少なくとも、「ポストモダン」とはたんなる時代区分を示す用語ではなく、つねに「モダン」との緊張関係にある認識論的な概念だという点は意識しておく必要があるだろう。

著者: 星野太

参考文献

  • 『ポスト・モダンの条件──知・社会・言語ゲーム』, ジャン=フランソワ・リオタール(小林康夫訳), 水声社, 1989
  • 『非人間的なもの──時間についての講話』, ジャン=フランソワ・リオタール(篠原資明ほか訳), 法政大学出版局, 2002

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