2019年08月01日号
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ポスト・グラフィティ

Post-Graffiti

グラフィティ文化を経由しながらも、その次の段階の文化状況を指す言葉。その点で「ストリート・アート」という言葉に近接しているものの、あまり普及することはなかった。歴史的には、1983年にニューヨークのシドニー・ジャニス・ギャラリーで開催された「ポスト・グラフィティ」展が最初にこの言葉を意識的に取りあげた。本展には、ラメルジーやリー・キュノネス、レディ・ピンクといった初期のグラフィティ・ライターが多く参加している。展示は、ストリートで生まれたグラフィティのヴィジュアルをそのままキャンヴァス上に再現した絵画作品を中心に構成され、その背景には、新表現主義や新しいポップの台頭といったアートのトレンドがあったと言えよう。その後、90年代中頃に、デルタやゼッツなどオランダのグラフィティ・ライターたちによってふたたびポスト・グラフィティが提唱される。デルタやゼッツは建築や工業デザイン、また『ガンダム』などの日本のロボット・アニメーションに影響を受け、そのスタイリッシュな幾何学的デザインをグラフィティのレタリングに応用したスタイルで知られる。ここでもやはり、グラフィティ文化の総合的な再解釈ではなく、その視覚的なデザイン性を他の視覚言語とミックスすることでポスト・グラフィティが着想されている。同時に、グラフィティ・ライター自身の手によって新しいムーヴメントが提示された点において、シドニー・ジャニス・ギャラリーでの展覧会とは意味合いが異なるだろう。また日本では、2009年に東京の旧在日フランス大使館でシンポジウム「ポスト・グラフィティの開拓線」が行なわれた。そこでは、タイトルに「ポスト・グラフィティ」という言葉が用いられているものの、実質的には視覚的側面に限定されない多様化するストリート・アートの可能性が議論され、その現状に対して批評の必要性を説いたことで特徴づけられる。

著者: 大山エンリコイサム+荏開津広

参考文献

  • アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論, , 大山エンリコイサム, LIXIL出版, 2015

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