2019年06月15日号
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ポリフォニー

Полифония(露), Polyphony(英)

ロシアの文芸学者であるミハイル・バフチンが対話原理を文学に導入し、著作『ドストエフスキーの詩学の諸問題』(1929、邦訳:『ドストエフスキーの詩学』)で提唱した芸術思想。バフチンは言語芸術の創作における題材やジャンル、プロット等の選択を支配する作者の創作姿勢や創作方法の特徴を「詩学」の問題とし、ドストエフスキーの小説がもつ原理的革新性を「ポリフォニー小説」「カーニバル文学」として定義づけた。ポリフォニーとは本来、多声音楽やその作曲様式を意味する音楽用語であるが、バフチンは作者が登場人物を意のままに操り、それを通して作者の思想を表現するという既存のヨーロッパ的形式をもつ小説(モノローグ小説)とは対照的に、ドストエフスキーの小説では登場人物が作者と対等の存在として設定され、それぞれのイデオロギーや階層といった社会的差異を前提としつつ、融合していない自立した複数の声や意識が織りなす対話的関係によって、高度な統一を実現していく構造をもつことを指摘した。当時のマルクス主義的なロシア・フォルマリズムに対しての否定的意見が本書では述べられているが、1929年に初版が刊行された後、50年代にフォルマリストのロマーン・ヤコブソンやシクロフスキーらにより紹介がなされた経緯がある。ポリフォニーの概念は、共参加が可能な開かれた構造として現代においてはさまざまな文化領域で応用され、世界各地でバフチン研究は継続されている。

著者: 森啓輔

参考文献

  • 『ドストエフスキーの詩学』, , ミハイル・バフチン(望月哲男、鈴木淳一訳), 筑摩書房, 1995
  • 『危機の時代のポリフォニー ベンヤミン、バフチン、メイエルホリド』, , 桑野隆, 水声社, 2009

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