2019年08月01日号
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マイク

Microphone

音声を電気信号に変換して、音声を伝達したり増幅したりして記録する機械。そもそもは19世紀に電話の受話器のために開発されたテクノロジーだが、1920年代の電気録音登場以降、今日の音響文化に大きな影響を与えるようになった。マイクには耳と口の二つの機能がある。マイクはそれまでは記録できなかった微小な音量の音を拾い上げるし、それまで聞こえなかった音を聞こえるようにするという意味で音を生産する。音を聞くと同時に音を発するのだ。この二つの機能が最大限に発揮されるのは、 ケージ以降の実験音楽の伝統である。それは、そのままでは知覚できない遍在的なモノを何らかの仕掛けを通じて知覚可能な音響として顕在化させる、という伝統である。たとえばケージは、レコードのカートリッジやコンタクトマイクを何かにこすりつけることで、世界にすでにつねに存在している「環境音」を聞き取り、顕在化することを好んだ。また、次世代の小杉武久の《Micro1》(1964)は、舞台上に置かれたマイクに紙を固く巻き付ける、という作品である。紙が緩やかに元の形に戻ろうとするプロセスの発する音を、マイクが聞き取り顕在化する。さらに次の世代のS・ライヒの《振り子の音楽》(1968)は、床に横倒しにされたスピーカーの上方をマイクが前後に揺れることでフィードバック音を発生させる作品である。スピーカーとは口の機能に特化したマイクだと言えるかもしれない。だとすると、ライヒのような実験音楽第三世代において、口と耳はひとつの円環構造を形成し、自らの発する音を聞き取り続けるに至ったのだと考えることも可能だろう。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『「声」の資本主義 電話・ラジオ・蓄音機の社会史』, 吉見俊哉, 講談社, 1995
  • 『音響技術史 音の記録の歴史』, 森芳久、君塚雅憲、亀川徹, 東京藝術大学出版会, 2011

参考資料

参考作品

  • 《カートリッジ・ミュージック》, ジョン・ケージ, 1960

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