2019年08月01日号
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メキシコ壁画運動

Muralismo(西)

メキシコ革命動乱期(1910年代)の後、国家の文化政策と連動するかたちで1920年代初頭に「革命の芸術」としてメキシコで開始され、国際的にも影響を与えた絵画運動。メキシコ革命の標的であったディアス独裁政権は欧化政策をとり、国民の大部分であるインディオおよびメスティーソ(白人とインディオのミックス)を抑圧してきたが、ディアス政権打倒後の革命政府はインディオ文化も内包した新たな国民国家形成を目指すようになる。壁画はインディオ美術の伝統において重要な絵画形式であり、非識字者の多い国民への教育的効果も期待できるため新政府の意に適った。公的施設の壁には革命および自国の歴史・風俗など新生メキシコにふさわしいテーマや普遍的モチーフが、土地固有の画法や西欧の伝統とは異なる画材を使用するなどして国内外の画家により描かれた。なかでも「壁画の三巨匠」と呼ばれるD・リベラ、J・C・オロスコ、D・A・シケイロスは、壁画運動の中心的存在として異彩を放つ。表現方法、好む画題、政治的立場は異なるが、それぞれ壁画運動の発展に尽力し、《メキシコの歴史》(リベラ、1929-30)、《立ち上がる僧侶イダルゴ》(オロスコ、1937)、《ポルフィリオの独裁から革命へ》(シケイロス、1957-65)など美術的評価の高い作品を残した。しかし、三者とも政府とつねに良好な関係にあったわけではなく、国外での制作も大きな比重を占めた。特にアメリカ合衆国で手がけられた壁画は、抽象表現主義(特にポロック)やグラフィティなど後の世代への影響も含め重要視されている。壁画運動の全盛期は三巨匠の活躍時期と重なるが、メキシコ国内の壁画制作は量的ピークを迎える60年代まで間断なく続き、国外でもメキシコ系アメリカ人らによるチカーノ・アートのなかに継承された。

著者: 長チノリ

参考文献

  • 『メキシコ壁画運動 リベラ、オロスコ、シケイロス』, , 加藤薫, 現代図書, 2003

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