2019年09月01日号
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メルツシアター

Merz-theater, Merzbühne(独)

メルツのアイディアに基づいて美術家のクルト・シュヴィッタースが構想した、綜合芸術として舞台をとらえる理論。カンディンスキーの論考「舞台構成について」に影響を受けつつ、シュヴィッタースが演劇に求めたのは、すべての素材が自己の存在の権利を有している状態で等しく演劇あるいは舞台を構成する要素となることだった。ワーグナーの「綜合芸術」の発想に感化されつつも、シュヴィッタースは、演劇やオペラとは異なりあらゆる要素が融合した状態を理想とし、また単に視覚的なあるいは聴覚的な鑑賞ではない全身的な体験によってのみ鑑賞されうる芸術を目指していた。すなわち「舞台の諸素材はすべて(…中略…)固形の身体、液状の身体、気体状の身体である」と称しているように、彼の目指していたのは、ダダイズムの格言「現実は流れている」のごとく、舞台上でさまざまな素材が運動しつつ変化を起こし、ダイナミックなエネルギーの交換を行なっている光景であった。とはいえ、こうした演劇のイメージは実例を生みだすことはなかった。二次元の芸術における諸形態や諸イメージを三次元の空間において現実化し動かすというアイディアをはじめ、メルツシアターの理論は後の美術作家たち、例えばハプニングの主導者アラン・カプローに大きな示唆を与えた。

著者: 木村覚

参考文献

  • Performance Art: From Futurism To the Present, RoseLee Goldberg, Thames and Hudson, 1988
  • The Dada Painters and Poets, Robert Motherwell, George Wotterborn, 1951
  • Kurt Schwitters' Merzbau: The Cathedral of Erotic Misery, Elizabeth Burns Gamard, Princeton Architectural Press, 2000
  • Kurt Schwitters, John Elderfield, Thames and Hudson, 1985

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