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リトグラフ/石版画
Lithograph, Lithography
凹版とも凸版とも異なる「平版」技法。1798年にドイツのA・ゼネフェルダーが完成させた。水と油が反発する化学変化を利用する。高純度の石灰石に脂肪性のインクやクレヨンで描画した上に弱酸性溶液を塗布すると、描画部分は水をはじく親油性、それ以外が親水性(保水性)となる。石面を水で湿らせた後に油性インクを乗せれば親油性の部分にのみインクが盛られる。これを専用の刷り機にかけて印刷する。石灰石がより繊細なトーンを表現できるが、亜鉛やアルミニウムなどの金属板でも可能。他の版画技法とは違い、彫りを介すことなく描画がそのまま紙に転写されることが最大の特徴であり、商業的にも多く活用される。化学反応を操作するため刷り師の果たす役割が大きく、この技法の普及は石版画工房の開設と切り離せない関係にあった。初期の代表的な作家にはロートレックやゴヤ、ドーミエらがおり、19世紀にはファンタン=ラトゥールから手ほどきを受けたルドンが独自の白と黒の世界を築き上げた。
著者: 成相肇
参考文献
- 『版画事典』, , 室伏哲郎, 東京書籍, 1985
- 『改訂版 版画の技法と表現』, , 町田市立国際版画美術館編, 町田市立国際版画美術館, 1991
- 『リトグラフ』, , 吉原英雄, 美術出版社, 1972
- 『リトグラフィ』, , ルネ・ロッシュ、河合昭三訳, 美術出版社, 1974
- 「石に描く──石版画の200年:ゼネフェルダーからピカソまで」展カタログ、, , , 町田市立国際版画美術館, 1998
関連ワード
関連人物
アロイス・ゼネフェルダー(Johann Alois Senefelder)
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec)
アンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Jean Théodore Fantin-Latour)
エドゥアール・マネ(Édouard Manet)
オディロン・ルドン(Odilon Redon)
オノレ・ドーミエ(Honoré-Victorin Daumier)
ケネス・タイラー(Kenneth Tyler)
ジャスパー・ジョーンズ(Jasper Johns)
フランシスコ・ゴヤ(Francisco José de Goya y Lucientes)
ロイ・リキテンシュタイン(Roy Lichtenstein)
ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)