2019年11月01日号
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レトリスム

Lettrism

レトリスムは、ルーマニアの詩人イジドール・イズーが第二次大戦直後のパリで提唱した、当時最も過激な前衛芸術運動である。意味のない音響詩や、独自の絵文字を多用したハイパーグラフィーと呼ばれる絵画・彫刻、表現手法のみならず製作制度、劇場や観客といった形式までをも解体するディスクレパン映画やパフォーマンスなど、多岐にわたる実験的な創作活動を展開した。レトリストには、イズーのほかに活動的な作家でありスポークスマン的存在だったモーリス・ルメートルや、フランソワ・デュフレーヌ、ガブリエル・ポムラン、ジル・ヴォルマン、のちに「アンテルナシオナル・シチュアシオニスト」を結成するギー・ドゥボールなどがいる。その現代的な意味に関して最も重要なのはイズーの方法論および主にルメートルによってなされたディスクレパン映画の業績であろう。レトリスムは「文字主義」と訳されるが、基本的な方法論はダダ/シュルレアリスムが行なった既成の芸術形式の解体を、言語の最小単位である文字にまで押し進めるものである。それはさらに先達のダダ/シュルレアリスムと同様、単なる芸術運動でなく、理論、思想および政治的社会実践を伴った総合的なムーヴメントであった。イズーの方法論では、レトリスムは言語の完全なる解体であるとともに、そのゼロ度からの全面的に自由な「創造」行為であり、それを実践する芸術家は「創造者」であるとして定義される。この創造性というユートピア的な概念によって、レトリスムは「青年の蜂起」という独自の社会変革理論を唱え、それは1968年5月のパリにおける五月革命などに大きな影響を与えた。この問いの直接性はまた、レトリスムが本質的に芸術運動であったからこそ可能であった。その芸術的実践の可能性と限界が現われるのが、その批判性をより社会実践的に継承・発展するシチュアシオニストとの分岐であった。

著者: 河合政之

参考文献

  • Conversation about Lettrism, Maurice Lemaitre, Pietro Ferrua(Douglas J. Foran trans.), Edition Le Point Couluer, 1997
  • 「モーリス・ルメートルとレトリスム」展カタログ, ビデオアートセンター東京, 2002

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