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ロイヤル・カレッジ・オブ・アート
Royal College of Art(RCA)
ロンドンにある世界有数の造形芸術のカレッジ(修士号以上に特化した大学院大学)。前身は、1837年にサマセット・ハウスに創設された「官立デザイン学校」。英国において国家が最初に関与したのは、他の西欧諸国のような美術アカデミーではなく、デザイン学校であった。設立当初にはデザインの教授法が定まらなかったが、50-60年代になると、政府の文官ヘンリー・コールらによって首尾一貫した教育システムが築かれ、サウス・ケンジントン博物館(現在のV&A美術館)と一体となり発展した。世紀末近くにはデザインから美術教育に比重が移るも、96年に、ヴィクトリア女王から「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」への改称を認可された後、ウォルター・クレイン(アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会会長)が校長に就任すると実践的な改革が行なわれた。このときからおよそ1930年代まで、アーツ・アンド・クラフツ運動の影響がみられる。01年には「建築・絵画・彫刻・デザイン」の4学科へと改組が行なわれた。20世紀初期に入ると、RCAは新しい彫刻の運動(ヘンリー・ムーア等)の本拠地、50-60年代にはポップ・アート(デイヴィッド・ホックニー等)の中心地となった。戦後は、デザイン学部内の専門化が進展し、60年代には「インダストリアル・デザイン」科が開設。70年代にかけては、商業美術の進展に伴いコミュニケーション部門が設置され、80-90年かけてはプロダクト・デザインの発展が目立っている。同校の歴史は「デザイン」から出発し、「美術」への傾斜を幾度か経て、絶えず自らのアイデンティティを問い直しつづけ、一時は「ロイヤル・カレッジ・オブ・デザイン」への校名変更が提案されてもいる。現在の学長は、テレンス・コンランの後を継いだジェームズ・ダイソンである。
著者: 竹内有子
参考文献
- Art and Design : 100 years of the Royal College of Art, Christopher Frayling, Richard Dennis Pubns, 1999
参考資料
- Royal College of Art, http://www.rca.ac.uk/
関連ワード
関連人物
ウォルター・クレイン(Walter Crane)
クリストファー・ドレッサー(Christopher Dresser)
ジェームズ・ダイソン(Sir James Dyson)
ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)
テレンス・コンラン(Sir Terence Orby Conran)
デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)
バーバラ・ヘップワース(Barbara Hepworth)
ヘンリー・コール(Henry Cole)
ヘンリー・ムーア(Henry Spencer Moore)
ミッシャ・ブラック(Sir Misha Black)
リドリー・スコット(Sir Ridley Scott)
ロビン・ダーウィン(Robin Darwin)