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ロシア未来派
Русский футуризм(露), Russian Futurism(英)
1910年代に興隆したロシア・アヴァンギャルドの潮流。多くの詩人、作家、画家たちが新しい芸術を志向するという意味で名乗った名称。12年、ヴェリミール・フレーブニコフ、アレクセイ・クルチョーヌィフ、ウラジーミル・マヤコフスキー、ダヴィド・ブルリューク、ヴァシーリー・カメンスキー、ベネディクト・リフシッツらによるペテルブルクの詩人グループ「ギレヤ」が「未来人」を意味するロシア語「ブジェトリャーニン(будетлянин/budetljanin)」を名乗ったのが始まり。ギレヤはマニフェスト『社会の趣味への平手打ち』を発刊し、古い文学や詩を「現代の汽船から放り出す」ことを宣言した。イーゴリ・セヴェリャーニンを中心とする「自我未来派」、ボリス・パステルナークらが参加した「遠心分離機」、キエフやオデッサの詩人たちなど、未来派を名乗るグループがロシア各地で興隆した。絵画においては、カジミール・マレーヴィチ、アレクサンドラ・エクステル、ナターリヤ・ゴンチャローワ、オーリガ・ローザノワ、リュボーフ・ポポーワ、ダヴィド・ブルリューク、ナジェージュダ・ウダリツォーワらがキュビスムとイタリア未来派を総合したクボ=フトゥリズム(立体未来派)として活動した。ギレヤは絵画のクボ=フトゥリズムと密接な関係にあり、クルチョーヌィフの脚本とマレーヴィチの舞台美術による未来派オペラ《太陽の征服》(1913)を上演した。未来派の詩人たちは、「言葉そのもの」を掲げて文字の形象や音といった物質性に注目し、クルチョーヌィフは意味を超えた言葉「ザーウミ」によるナンセンス詩を制作した。ロシア革命後、マヤコフスキーは教育人員委員であるボリシェヴィキのルナチャルスキーの支持を受け、23年未来派のメンバーとともに雑誌『レフ』を発刊した。
著者: 河村彩
参考文献
- 『ロシア・アヴァンギャルド』, 亀山郁夫, 岩波新書, 1996
- 『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』, 桑野隆, 東京大学出版会, 1996
- 『ロシア・アヴァンギャルド 未完の芸術革命』, 水野忠夫, PARCO出版, 1985
- 『ロシア・アヴァンギャルド芸術 理論と批評 1902-34年』, J・E・ボウルト編(川端香男里訳), 岩波書店, 1988
- 『ロシア・アヴァンギャルド5 ポエジア 言葉の復活』, 亀山郁夫、大石雅彦編, 国書刊行会, 1995
関連ワード
関連人物
アレクサンドル・エクステル(Алекса́ндра Александровна Экстер)
アレクセイ・クルチョーヌィフ(Алексей Елисеевич Крученых)
ウラジーミル・マヤコフスキー(Владимир Владимирович Маяковский)
オーリガ・ローザノワ(Ольга Владимировна Розанова)
カジミール・マレーヴィチ(Казимир Северинович Малевич)
ナジェージュダ・ウダリツォーワ(Надежда Андреевна Удальцова)
ナターリヤ・ゴンチャローワ(Наталья Сергеевна Гончарова)
リュボーフ・ポポーワ(Любовь Сергеевна Попова)
ヴェリミール・フレーブニコフ(Велимир Хлебников)