2019年08月01日号
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ロマン主義

Romanticism

18世紀末から19世紀前半の西欧で勃興した芸術思想、あるいはその系譜に連ねられる作家や作品を総体的に名指す言葉。ロマン主義と呼ばれる傾向や運動は、絵画のみならず哲学・文学・音楽・批評などさまざまな分野に見られる曖昧な名称であるが、その多くには個性の称揚や規範への抵抗といった一定の共通要素も見られる。もともとロマン主義とは、啓蒙期のヨーロッパにおける知性や合理性への信仰に対して、感情や非合理性を称揚する態度を指して用いられるようになった言葉である。この用法そのものは、18世紀末から19世紀初頭にかけてのフリードリヒ・シュレーゲルの著作に由来している。シュレーゲルは、形式的な古典主義文学とは異なる想像力豊かな文学を、かつての俗ラテン語(民衆語)であるロマンス語に仮託して「ロマン主義」と呼んだ。シュレーゲル兄弟やフリードリヒ・シェリングに代表されるこのドイツ・ロマン主義はその後フランスにも伝播し、ロマン主義という言葉は、芸術家の内面や精神性を強く表出する芸術作品に対して拡張的に用いられることになる。絵画におけるロマン主義も、保守的な新古典主義に対抗する一連の絵画を指しているという点で、やはり上記のような特徴が当てはまる。ただし、同じロマン主義に括られてはいても、その傾向はフランスのウジェーヌ・ドラクロワやテオドール・ジェリコー、イギリスのウィリアム・ブレイクやウィリアム・ターナー、ドイツのカスパー・ダーヴィト・フリードリヒやフィリップ・オットー・ルンゲなど、各地域のあいだでかなりの異なりを見せることも確かである。仮に便宜的な区分を用いるならば、同じロマン主義のなかでも「ラテン系」「アングロサクソン・ゲルマン系」という大まかなカテゴリーを設けることが可能だろう。なぜなら、フリードリヒに代表される後者の北方ロマン主義絵画の特徴としてしばしば挙げられるのは、崇高な自然の描写を通じた神性や超越性への志向だからである。

著者: 星野太

参考文献

  • 『ドイツ・ロマン主義美学 フリードリヒ・シュレーゲルにおける芸術と共同体』, 田中均, 御茶の水書房, 2012
  • 『ドイツ・ロマン派風景画論 新しい風景画への模索』, 神林恒道、仲間裕子編訳, 三元社, 2006
  • 『ロマン主義』, デーヴィッド・ブレイニー・ブラウン(高橋明也訳), 岩波書店, 2004
  • 『近代絵画と北方ロマン主義の伝統 フリードリヒからロスコへ』, ロバート・ローゼンブラム(神林恒道、出川哲朗訳), 岩崎美術社, 1988
  • 『ドイツ・ロマン主義絵画 フリードリヒとその周辺』, H・J・ナイトハルト(相良憲一訳), 講談社, 1984

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