2019年10月01日号
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三角形の演劇と直線の演劇

Theatre-Triangle and Theatre of the Straight Line

ロシアの劇作家で演劇理論家のフセヴォロド・メイエルホリドが「自然主義演劇と気分の演劇」(1908)のなかで論じた、演劇の基本要素(演出家、戯曲作家、俳優、観客)の関係をめぐる二つの演劇形態。三角形の演劇は、演出家が戯曲作家と俳優を背後においた三角形をなして観客と向き合う演劇である。そこでは作品の中心を演出家が担っており、戯曲作家と俳優の活動は演出家の創造行為を観客へ届けるための手段にすぎない。一方、直線の演劇は、四要素が一直線に並んでいるイメージに基づき、例えば、俳優は演出家の創造行為と歩調を合わせながら、また演出家も俳優の創造行為に歩調を合わせつつといった仕方で、それぞれが自由な仕方で各人の考えを観客に提示する。三角形の演劇において、演出家のコンセプトを伝えることと引き替えに、俳優の力量など、各人の個性は犠牲にされてしまう。これに対して、直線の演劇の場合には、芝居についての議論を通して演出家は計画を立てるものの、議論のなかで演出家、戯曲作家、俳優が相互に鼓舞しあい、また、議論の後ではそれぞれが独立した状態を保持している。メイエルホリドが求める演劇とは演出家が全面的に支配するのとは異なる、演劇の基本要素が相互に歩調を合わせつつも各人が独立して力を発揮する演劇であり、とりわけ「ドラマは俳優の芸術である」と語られるように俳優の表現の可能性を重視する演劇であった。

著者: 木村覚

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