2019年12月01日号
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切り子面

Facet

分析的キュビスム期(1908-12頃)のピカソとブラックの作品に頻繁に用いられた絵画の構成要素のこと。「キュビスム」という名称は、1908年にブラックがエスタックで描いた一連の風景画が出品されたサロン・ドートンヌにおいて、審査員を務めていたマティスがそれらの絵画を指し、「小さな立方体」の集合と形容したことが起源にあるとされる。だが、分析的キュビスム期には、立方体というよりはむしろ形態を無数の小さな平面へと分解し描く手法が顕著である。「切り子面」として形容されるのは、形態を分割するこの面(英語ではfacet)のこと。それぞれの面は自律的な陰影と傾斜角を持ち、またそれらが分割されつつ部分的に重なり合うことで、個々の面が漸進的に他の部分へと移行するような効果がもたらされた。この小さな面による形態の展開は、絵画の手前(浅い空間性)を鑑賞者に意識させるとともに、描かれた対象とその周辺の領域とを曖昧に結合させ、画面全体を引き延ばされた連続体として調整する。対象を切り子状に解体することで特にブラックが意図していたのは、三次元的な実体を二次元平面のなかで宙吊りにすることであり、切り子面相互の差異と反復による形態の空間への侵食作用だった。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『キュビスム(岩波世界の美術)』, , ニール・コックス(田中正之訳), 岩波書店, 2003

参考作品

  • 《エスタックの家》, G・ブラック, 1907
  • 《オルタのレンガ工場》, P・ピカソ, 1909

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