2020年10月15日号
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劇場

Theatre

劇場は演劇やダンスなど舞台芸術の上演が行なわれる建築物を指す言葉であり、同時に、その場所を運営する人員・組織を指すものでもある。本来は舞台芸術の上演を専門とする場所を指すが、近年では舞台芸術が上演される場所一般を指して(例えばギャラリーなども含めて)劇場という言葉を用いることも多い。
古代から中世にかけて、演劇はほとんどが野外で上演され、街の広場なども仮設の劇場として使用された。その後、照明器具の発展とともに屋内空間を用いた劇場が主流となるが、野外劇場も現在に至るまで継続的に使用されている。
劇場の形式や役割については国や地域、歴史的・文化的背景によって多種多様だが、ここでは西洋演劇の影響下にある日本の劇場について概観する。1911年、日本初の西洋式演劇劇場である帝国劇場が竣工。24年には土方与志らによって初めての新劇の常設劇場として、劇場所属の同名の劇団とともに築地小劇場が開場。以後、多くの新劇の劇団が劇場・稽古場・教育機関などの機能を持つ拠点として自前の劇場を設立していくことになる。これらはいずれも民間の手によるものだった。歌舞伎などを旧劇と呼称して日本演劇の更新を掲げ、あるいはのちにプロレタリア演劇の担い手となるなど反権力の性格の強かった新劇だが、 60年代になるとそれ自体が硬直した制度として批判されるようになる。唐十郎や佐藤信らが街なかにテントを展開し、あるいは鈴木忠志や串田和美らが自らつくった劇場で公演を行なったことには、既存の制度への批判の意味合いがあった。70年代から80年代にかけて、つかこうへいや鴻上尚史、野田秀樹らが若者を中心にそれまでにないほどの観客を集め、一種のポップ・カルチャーとしての演劇が登場してくる。並行して好景気を背景に企業メセナによる劇場(紀伊國屋ホール、PARCO劇場など)が隆盛するが、バブル崩壊とともに下火となっていく。国立の劇場として新国立劇場が整備されたのはようやく97年。それまで公立の「劇場」といえば、多くは舞台芸術を専門としない多目的ホールであった。その後も公立劇場は増えていくものの、その役割を規定し方向づける「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」、通称「劇場法」が施行されたのは2012年になってのことである。2000年代以降は景気の停滞による劇団制度の困難や海外進出の容易さなどさまざまな理由から小規模な公演が増加し、ギャラリーやカフェなどの空間が劇場として使われることも一般的となっている。屋外での上演からは反権力的意味合いは薄れ、舞台芸術の公的性格を示すことが目的の場合も多い。

著者: 山﨑健太

参考文献

  • 『演劇学のキーワーズ』, 「劇場/舞台/演戯空間」長谷川悦朗, 佐和田敬司、藤井慎太郎、冬木ひろみ、丸本隆、八木斉子編, ぺりかん社, 2007

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