2019年06月15日号
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北方ロマン主義の伝統

Northern Romantic Tradition

アメリカの美術史家ロバート・ローゼンブラム(1927-2006)が自著『近代絵画と北方ロマン主義の伝統』(1976)の表題として用いた言葉。ここで言われる「北方ロマン主義」とは、18世紀から19世紀にかけてのドイツ・イギリスを中心に展開したロマン主義絵画のことであり、フランスやその他の地域におけるロマン主義と区別するためにこのような用語が選ばれた。

ローゼンブラムによる上記の著作は、戦後アメリカの絵画がマネやクールベ以降のフランス絵画の伝統の内にあるとする従来の見方に対し、むしろそれとは異なる「北方ロマン主義」絵画の伝統が存在することを強く訴えるものであった。具体的には、フリードリヒに代表される神秘主義的な傾向や宗教を重視する精神性が、ポロック、ロスコ、ニューマンをはじめとする戦後の抽象表現主義に継承されているというのがその根本的な主張である。一見してわかるように、ローゼンブラムの主張は、「パリからニューヨークへ」という従来のモダニズムの歴史観に対する修正主義的な側面を大いに含んでいる。『近代絵画と北方ロマン主義の伝統』におけるローゼンブラムの議論はそれ自体として十分に説得的なものであるとは言いがたいが、19世紀から20世紀にかけての単線的なモダニズムに対するオルタナティヴな見方を打ち出したという点で稀有なものであることも確かである。

著者: 星野太

参考文献

  • 『近代絵画と北方ロマン主義の伝統──フリードリヒからロスコへ』, ロバート・ローゼンブラム(神林恒道、出川哲朗訳), 岩崎美術社, 1988

参考作品

  • 太陽の中に立つ天使, ターナー, 1846
  • 小さな朝, フィリップ・オットー・ルンゲ, 1808
  • 海辺の僧侶, C・D・フリードリヒ, 1810

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