2019年09月01日号
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印象批評

Impressionistic Criticism

芸術作品を論じるにあたり、客観的な価値基準や体系化された理論に拠らず、主観や印象を重視する批評スタイルのこと。18世紀には最初の美術批評家とされるディドロが直観的判断に基づいた時評を行なっていたが、その後、作品の客観性について考察する新古典主義と、より主観的な批評に傾いたロマン主義の対立が明確になることで、印象批評が成立する基盤が整ったと考えられる。興隆期は19世紀。代表格としては、自己の内的なヴィジョンを作品に投影し、作品が生み出す効果の分析から出発した唯美主義者のウォルター・ペイター、最高の批評は「個人的な印象のもっとも純粋な形式」であるとし、それ自体に独立した創作物としての価値を授けたオスカー・ワイルド、学識による思想体系化に抗い、「偏向的」で「情熱的」な批評を信条とした詩人兼批評家のシャルル・ボードレールらが挙げられる。個人的経験の記述に終始するおそれがあること、また理論化への手続きを怠っているかに思われてしまう側面から、印象批評そのものが批判の的となる場面も少なくはない。しかし、作品を見て語ることを批評の基本作業のひとつとみなすならば、優れた印象批評がもつ豊かなインスピレーションと創造性に満ちた作品描写から、その可能性を再考することもできるだろう。

著者: 中島水緒

参考文献

  • 『美術批評史』(第2版), リオネロ・ヴェントゥーリ(辻茂訳), みすず書房, 1971

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