2019年06月15日号
次回7月1日更新予定

Artwords(アートワード)

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引用/転用/リミックス(映像)

Sampling/Detournement/Remix

既成の映像を引用して新しい作品を作る方法はファウンド・フッテージと呼ばれ、実験映画やヴィデオ・アートにしばしば見られる。そのようにある映像の断片を別の文脈に置くことは、必然的にその映像に対してなんらかの新しい視点を与えることになる。この手法では、元の映像への純粋なオマージュとして、単に映像に新しい意味を持たせて蘇らせることに重点を置く場合と、映像にまつわる制度的な問題に対する批判として行なわれる場合がある。後者の場合にも、映像が持つ機能や構造に注意を向けさせる作品と、その背後にある権力関係や政治的問題に対して注意を喚起しようとする作品がある。前者の傾向がよく見られる作家として、例えばアメリカのアンダーグラウンド映画のジョージ・ランドウやケン・ジェイコブス、60年代の飯村隆彦など、後者の傾向が強い作家としてシチュアシオニストのギー・ドゥボールなど、また前者と後者を併せ持つ作家として、レトリストのモーリス・ルメートルやアメリカ西海岸のブルース・コナーなどが挙げられる。特にフランスのレトリストおよびシチュアシオニストは、そのような批判的意図をもって既成の映像を引用することを「転用」と呼んだ。このような方法はヴィデオの時代になってさらに容易になり、多くの作品を生むことになる。例えばナム・ジュン・パイクによる初期のヴィデオ・アート作品には、TVの映像(ニクソンの演説など)を使用して、それを電気的に歪めた作品が多く見られる。また、ジャン=リュック・ゴダールによる『映画史』(1988-98)は、映画史全般にわたるラディカルかつ徹底的な引用の作品として知られる。ゴダールはこの作品で、一貫して映画的な視点からヴィデオを扱っているが、映画がすべてヴィデオ化した終局点を示すとともに、ヴィデオというメディアがいまだ映画の持つ映像美学を乗り超えられずにいることの象徴となっているともいえよう。現代ではこのような引用の手法は、クラブ・カルチャーにおけるVJ(ヴィデオ・ジョッキー)などを中心に、リミックスというかたちで受け継がれているが、その多くは単にエンターテインメント的な消費の目的でなされているにすぎない。

著者: 河合政之

参考文献

  • JEUNE, DURE ET PURE! - Une histoire du cinéma d'avant-garde et expérimental en France, Nicole Brenez, Christian Lebrat, Cinémathèque Française, 2000
  • 『アメリカの実験映画 〈フィルム・カルチュア〉映画論集』, アダムズ・シトニー編(石崎浩一郎訳), フィルムアート社, 1972

参考資料

  • 『ジャン=リュック・ゴダール 映画史 全8章』, 紀伊國屋書店, DVD, 2001

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