2019年12月01日号
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文化産業

Kulturindustrie(独), Culture Industry(英)

ドイツの理論家テオドール・アドルノが1930年代に創出した概念であり、マックス・ホルクハイマーとの共著である『啓蒙の弁証法』(1947)のなかの一章、「文化産業——大衆欺瞞としての啓蒙」で特に論じられた。資本主義経済における複製技術とそれにともなう大量生産・大量消費の枠組みのなかで、文化産業は生活への付加価値としての「文化」を利用し利益を生み出す、20世紀に特有の産業部門である。同書においては主に映画やラジオが想定されているが、それだけに留まらず、現代のポピュラー・カルチャーのあり方に言及する上で避けることのできない用語であると言える。アドルノは、文化が産業として複製され大衆によって消費される現代の状況をこの概念によって示し、また同時に、その状況を管理社会として強く批判した。彼による文化産業論の思想はエリート主義に貫かれており、受け手による情報の主体的で自由な変形のあり方を無視しているという批判がしばしばなされるが、この概念によってアドルノが問題化しているのは受容する大衆側ではなく、大衆を操作・管理しようと目論む体制が形成されつつある社会変化の側面であると言える。

著者: 土屋ユリ

参考文献

  • 『松山東雲女子大学人文学部紀要』16、19-34, 「文化産業論再考 『否定弁証法』における『つづき』」, 河原理, 松山東雲女子大学、松山東雲短期大学, 2008
  • 『アドルノ 音楽・メディア論集』, テオドール・W・アドルノ(村田公一、舩木篤也、吉田寛訳)、渡辺裕編, 平凡社, 2002
  • 『啓蒙の弁証法』, マックス・ホルクハイマー、テオドール・W・アドルノ(徳永恂訳), 岩波文庫, 2007

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