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木口木版
Wood engraving
版画技法のひとつ。凸版に分類される木版だが、一般的な木版(板目木版)とは大きく異なり、緻密な表現効果は銅版画に近い。西洋木版とも呼ばれる。柘植、椿、梨、楓など非常に目の詰んだ木を輪切りにした面(木口・こぐち)の中央部を版木に用い、エングレーヴィング用のものに似たビュラン(burin)を使用する。版木のサイズは木の太さに限定され、通常5〜6cm、最大でも15cm程度だが、より大きい版木が必要な場合は寄せ木にする。18世紀後半にイギリス、次いでフランスで行われるようになった。初期の代表的な作家にT・ビューイックがいる。19世紀中頃からは書籍の挿絵として頻繁に使われ、1880年代に写真がそのまま印刷される方法が開発されるまで大量に制作された。この頃活躍したのがG・ドレであり、ドレの原画は高い技術を持つ彫り師たちによって巧みに彫り出された。写真に役割を譲った後も、この緻密な表現は現代の版画家たちに取り上げられている。
著者: 成相肇
参考文献
- 『版画事典』, , 室伏哲郎, 東京書籍, 1985
- 『版画 進化する技法と表現』, , 佐川美智子監修、岡部万穂編, 文遊社, 2007