2019年10月15日号
次回11月1日更新予定

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様式

Style(英), Stil(独)

大衆文化におけるアイデンティティの提示として日常化した「行動様式」または規範や価値判断を含んだ古来の「文体」と混用されつつ、作品や作者の集合に類型的な特徴を指す。ビュフォンの文言「文(style)は人なり」(1753)は、被造物の真なる表現という古典主義的規範詩学を引き継ぎながら、以降芸術家固有の個人様式の希求または強調(小説家の「文体」が典型)に転用された。一方旅行、印刷術、美術館などの発展によって、作品の比較と多様性の認識が容易な条件が整備された16-18世紀、この語は芸術一般に移植され、民族、時代、流派の特徴つまり集団様式を指すようになった。古典主義の下では建築の「オーダー」の考え方も様式に近づいたとはいえ、集団様式という考えは精神的背景と造形との連関を前提した芸術史学(例えばA・リーグル)の根幹である。個人様式とともに作品の特定・分類、真贋鑑定や価値評価の原理となり、また19世紀後半からウィーン学派を中心とする方法論的探求を促した。特にH・ヴェルフリンは作者や作品内容から純粋な視覚形式を独立させ、芸術に内在する様式の時代展開の契機を定位した。様式は客観的な分析を導く没価値的な分類概念にとどまらず、元は蔑称だった様式名があるように、好悪などの主観を含んで直感的に感知される。またこの概念は作品完成後の分類に使われたばかりか、19世紀末建築のリヴァイヴァリズムのように、カタログ的に整備された諸様式から(ときに折衷的に)選択・適用されるという時制の捻れをも示したが、これは諸様式を規範として等価にみなした結果と言える。つづく表現主義などの反動と併せると、E・スーリオの指摘どおり※1様式が独創と規範の相反する両面を含むことがわかる。

著者: 天内大樹

参考文献

  • 『美術史の歴史』, ヴァーノン・ハイド・マイナー(北原恵ほか訳), ブリュッケ, 2003

註・備考

  • ※1:春木有亮『実在のノスタルジー スーリオ美学の根本問題』行路社、2010、pp.42-44。

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