2019年08月01日号
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状況の演劇

Un thё âtre de situations(仏), Theatre of Situations(英)

フランスの哲学者・文学者のジャン=ポール・サルトルが彼自身の実存主義的な立場に基づく演劇のあり方を示した用語。サルトルは『存在と無』(1943)のなかで「自由は状況のうちにしか存在しないし、状況は自由によってしか存在しない」と説いた。自分がつくり出したのではない抵抗や障害に出くわすとき、人間はその与えられた状況のなかで自由に自己を選択する者となる。こうした実存主義的な視点に基づいてサルトルは演劇の目的を明示した。「人が与えられた状況のなかで自由であり、与えられた状況のなかで自由なものとして自己を選択し、その状況のなかで、またその状況によって自分自身を選択するということが真実であるならば、演劇は単純で人間的なさまざまな状況と、これらの状況のなかで、またこれらの状況によって自分を選択する自由とを示さなければならない」。状況が与えられたものである限り、容易に状況は不条理となりうる。状況の演劇はそのありさまを提示する演劇である。《蠅》(1943)などの作品がある状況における人間の自由を語るものである一方で、《アントナの幽閉者》(1959)や《出口なし》(1944)は状況がすでに階級・家族・歴史によって決定されているというサルトルのマルクス主義的な側面が反映された作品である。サルトルの演劇観は、理論的側面としてはロラン・バルトに波及し、また日本においては鈴木忠志、別役実、唐十郎ら、1950年代から60年代にかけて大きな影響を与えた。

著者: 木村覚

参考文献

  • Sartre on Theater, Michel Contat, Michel Rybalka and Jean-Paul Sartre, Quartet, 1976
  • 『世界の大思想 サルトル』, 松浪信三郎ほか訳, 河出書房新社, 1982

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